ドリーム小説
あなたに会うために生まれてきました
あなたと恋するために生まれてきました
「グリフィンドール!!」
組分け帽子の高らかな宣言とともに、獅子の絵の垂れ幕の下から歓声が上がった。
今年もまた組分けの儀式は順調に進んでいた。椅子に座る少年に帽子が被せられると、
「う〜む・・・・ハッフルパフ!!」
と帽子は決断を下した。ハッフルパフ陣営から歓声が上がり、少年が手招きで迎えられた。
儀式はまもなく終わりに差し掛かろうとしていた。新入生を迎え、また新しい1年が始まる。いつもと変わらぬ日常が。誰もがそう思っていた。
■ 魔女の条件 〜The Love of the Maiden〜 <1> ■
「ふむ。これで新入生は全員かの?今年も全て順調に進んだ。良きことじゃ」
自慢の白ひげを撫でながら、ダンブルドアは満足気に頷いた。各テーブルでは1年生が自己紹介しているのか、とても騒がしい。そんな中、もちろん違うことに気をめぐらせている生徒もいた。
「もう僕腹ペコだよ。ご飯まだぁ?」
獅子寮の垂れ幕の下、ロンは机に突っ伏してそんな愚痴をこぼしていた。
「お行儀悪いわよ、ロン。もうちょっと待てないの?」
それを見たハーマイオニーがまるで姉のように叱るが、ロンは聞く耳を持たない。相変わらずの2人の痴話喧嘩に慣れっこのハリーは苦笑し、教師席に目を移した。
「あれ?マクゴナガル先生がいない。どうしたのかな?」
いつも校長の横に座って威厳を示している副校長が今日は空席だった。ハーマイオニーは不思議な顔をしているがロンは、
「風邪じゃない?もしくはノミ取り用首輪を買いにペットショップに行ったとか」
実にどうでもいい様子。
そのときダンブルドアが2度手を叩いた。皆一斉におしゃべりを止め、校長の方に視線を送った。「待ってました!」とロンは目を輝かせて身を起こした。
「さてさて。皆お腹をへこませてお待ちかねのようじゃからのぉ。そろそろ、」
ダンブルドアが再度手を叩いて、料理を出そうとしたときだった。
「お待ちください、校長!」
重い音と共に正面の扉が開き、そこに背筋をぴんっと伸ばしたマクゴナガルが現れた。突然の副校長の出現に、生徒たちの目がマクゴナガルに移った。
「おや、マクゴナガル先生。どうなさったかな?」
マクゴナガルは呑気なダンブルドアに歩み寄ると、こそこそと何かを耳打ちした。生徒たちは彼女の突然の登場に何だろうと不思議な顔をしている。だが中にはやはり、
「早くしてよぉ」
ぐだぐだの犬のようにロンは再び机に突っ伏していた。ハーマイオニーは最早呆れて何も言えない。
「おぉ。そうかね、ようやくあの子が」
「はい。ご報告が遅くなり、申し訳ありません。何分、魔法省から許可が下りたのが今さっきでして」
ダンブルドアは嬉しそうに目を細め、何度も頷いた。
「よろしい。許可しよう」
マクゴナガルはダンブルドアに一礼すると、今度は優しげな顔で正面の扉の方を向いた。
「校長先生のお許しが出ました。さぁ、お入りなさい」
誰に向かって声をかけているのだろうと生徒も教師も全員が扉の方を見た。すると、いつの間に来たのかそこには一人の少女が立っていた。扉から遠い生徒は、椅子から立ち上がってまで少女の姿を見ようとしている。
どよめきは扉に近い生徒から。それは徐々に波及していき、終には大広間中に歓声が広がった。
そこには透き通るような白い肌に深い青の瞳、そして長い銀髪をたずさえた美しい少女が佇んでいた。背も低めで容姿は少し幼いが、不思議な雰囲気が彼女の幼さを消していた。しんしんと降る雪のような不思議な少女だった。少女が顔を上げて教師席の方に視線をやると、ダンブルドアは少女に向けて微笑んだ。彼女もそれに答え、ふわりと微笑み返した。
「(((((・・・・・・か、かわいい)))))」
「ハリー、あの子絶対ヴィーラだ!」
「そんなわけないでしょう!」
突拍子もない台詞とともにロンの頭の中からごちそうが吹き飛んだ。その変わり身にハーマイオニーは呆れた。
「静粛に!!」
マクゴナガルの一声で騒ぎは少しずつ小さくなっていった。
「彼女は諸事情により正式年度でのホグワーツへの入学が許可されませんでした。ですが彼女はすでに欠席分の授業の遅れを補い、それ以上の知識を習得していることが試験により明らかにされました。よって異例ではありますが、今学期4年生としての入学が許可されます」
その稀な出来事に周囲から驚きの声が上がった。
「・!!」
名を呼ばれた少女はゆったりと椅子に座ると帽子を被せられた。生徒全員、教師もが組分け帽子に注目し、自分の寮が呼ばれることを願っているのは明白だった。
「ふ〜む・・・・これはこれは。ハリー・ポッターのときと同じくらい・・・いやそれ以上に難しいのぉ」
即決しない帽子の言葉に、全員が生唾を飲み込んだ。
「。君はどの寮に行っても申し分ない。気質は・・・グリフィンドールに近い」
その言葉に獅子寮の生徒たちの目が輝いた。一方で、蛇寮の生徒たちは面白くない顔をしていた。
「優しさを兼ね備え、勤勉で苦労をいとわない。機知に富み、学識も高い。ハッフルパフにもレイブンクローにもなれる」
帽子のいまだかつてない程の長い組み分けがは続いた。
「・・・だが・・・・これは運命というべきか。今回君の組分けを決定するのは私ではない。これはやはり、」
一息吸い込み、帽子は決断を下した。
「スリザリン!!」
「「「「「えぇーーーーーーーーっ!!!?!?!」」」」」
大広間からこれまでで一番の大歓声が上がった。もちろんそれは3つの寮からであって、選ばれたスリザリン陣営からは思わぬヒロインの獲得に大喝采、拍手の嵐。全員勝ち誇った顔をしている。
「うわぁ・・・。ハリー見ろよ、マルフォイのあの顔」
ハリーはロンが指差す方をチラッと見て、すぐに同じようにうんざりした顔をした。ドラコの鼻の高さが通常の1.5倍になっていた(当社比)。2人は重苦しい溜め息を吐いた。
マクゴナガルに促され、と呼ばれた少女はスリザリンのテーブルに向かった。抜け目ないドラコは、誰よりも先に少女に声をかけた。
「ミス・。僕の隣へどうぞ」
ちゃっかり自分の隣へ座らせるドラコに大広間全員の視線が突き刺さる。だがドラコは全く気にしていなかった。
「どうもありがとう。私は。・。・・・えっと」
ふわりと微笑むにドラコの顔は自然と赤くなった。
「ぼ、僕はドラコ・マルフォイ。ドラコでいい。同じ4年生だ」
「本当?一緒だね。私はでいいよ」
その声や話し方からもの可愛らしさがにじみ出ている。一人わたわたとするドラコは不意にに手を握られ、一瞬思考が停止した。が近づくと微かな桃の香が鼻をくすぐった。
「ドラコがホグワーツでの最初の友達よ。仲良くしてね、ドラコ」
決して媚を売っているわけではない。その純粋な笑みにドラコは顔を赤くしてただ頷くしかなかった。
「あのマルフォイ坊ちゃんを笑顔だけで骨抜きにするとは。・・・やるな」
「あぁ。すでに奴に正常な意識はない」
おなじみの双子フレッド、ジョージはその様子をオペラグラスで観察していた。がグリフィンドールに選ばれなかったことですっかり肩を落としてしまったロンに、ハーマイオニーは呆れて溜め息を漏らしていた。
「あなたたちもさっきは異常なほど顔が赤かったわよ。ていうか、その覗きみたいな行為やめたら?」
「案ずることなかれ、ミス・グレンジャー」
「うむ。これは覗きではなく諜報活動の一環」
何のだよ、という突っ込みはなしの方向で。今年も賑やかになりそうとハーマイオニーは思ったとか。
しばらくしてダンブルドアがよっこいしょと立ち上がり、両手を広げた。
「さぁて、みんな。全員そろったところで、食事にするとしようかの」
パンッと手を叩くとテーブル中にあふれんばかりのごちそうが現れた。生徒たちは我先にと食事にかぶりつく。
「ふぉっふぉっふぉ。良きかな、良きかな」
白ひげの校長は割りと呑気だった。
事前に聞かされていたとはいえ、今日初めて見ることとなった編入生のことで教師席も沸いていた。
「いやぁ、かわいらしい子が入学しましたな」
「本当ですよ。彼女に受けてもらった試験の成績、ご覧になりました?素晴らしいの一言です」
自寮に選ばれなかったことなどとうに忘れ、フリットウィックとスプラウトはの話で盛り上がっていた。
「彼女を獲得されて本当にうらやましいですよ、スネイプ先生」
フリットウィックは隣に座る黒髪の教師に目を向けた。スネイプは実にどうでもいいという顔をして静かに食事をしていた。
「別に。特に興味はありませんな」
スネイプは横目でちらりと彼らを見ただけで、再び食事を続けた。相変わらず周囲とは違った空気を身に纏っている。
「(多少成績がいいとはいえ、何を一人の小娘ごときで)」
不意にむすりとした顔を上げ、スネイプは自分の寮のテーブルに視線を向けた。偶然だろう。噂される少女がこちらを見ていた。
「ねぇ、ドラコ。母に聞いたのだけれど、寮には寮監の先生がいるって本当?」
の問いかけにドラコは軽く肯定の返事をした。
「スリザリンの寮監はどんな先生なの?」
の問いに、ドラコは自信ありげな不敵な笑みを浮かべた。
「僕らの寮監はとても素晴らしい先生さ。担当は魔法薬学で、スリザリン生は皆尊敬している。特にスリザリンを贔屓にして下さってグリフィンドールを憎んでいるところなんか」
ドラコは誇らしげに演説するが、聞く限りではいいイメージではない。だがは不思議とその先生が見てみたいと思った。
「ねぇ、ドラコ。その先生ってどの方?」
は教師席の方に目を向けた。
「あぁ、あの左端に座っているのが僕らの寮監」
はドラコの言う方に目を向けた。ダンブルドアからずっと目を横に向けていくと黒髪の男の人が目に留まった。偶然か、隣の先生と話をしていたその人は、不意に顔を上げた。
「スネイプ先生さ」
彼と目が合った。
その瞬間不思議なくらい周りの時間がゆっくりと動き出した。
はまるで時が止まったように感じた。
2人の視線が交錯する。
スネイプもを見ていた。
どちらも目をそらさない。
そのとき、確かには声なき声を聞いた。
そのとき、確かにスネイプは声なき声を聞いた。
『なんだこれは』
やっと会えた
『君か』
あなたですね
『我輩に問いかけるのは』
会いたかった
『君は』
ずっと会いたかった
『誰だ』
「―――、!!」
「はい?!」
不意にの脳が覚醒した。ドラコは何度も名を呼んでいたようで、を心配そうに見つめていた。
「どうしたんだ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫・・・・だと思う」
は、まだぼぉっとする頭を軽く振った。だが、深蒼の瞳の焦点は定かではなかった。
「先生?スネイプ先生?どうかなさいましたかな?」
急に微動だにしなくなったスネイプにフリットウィックが声をかけた。
「・・・・あ・・いや、失礼」
スネイプは少し慌てたように視線を泳がせる。
「何でも・・・ありません」
いつものように単調に答えるスネイプの頬を、だが汗が一筋流れた。
ドラコはまだ心配しているのか、しきりにに話しかけた。
「気分が悪いなら保健室に行くか?」
「平気。ちょっと疲れていただけだから。心配してくれてありがとね、ドラコ」
ドラコはまだ心配だったが、が柔らかくにっこりと笑うから一応納得はした。
「そうか。ならいいんだ」
ドラコにお礼を告げてから、はもう一度だけちらりと教師席に目を向けた。先程目が合った黒服の教師は今はどこか虚空を見つめていた。
今のには気付けることはなかった。
心の中を突然通り抜けた一筋の風。
ほんの一瞬の想いは、未熟なの心ではまだ掴みきれなかった。
ただ、の白い頬がほんのり朱に染まっていたことが、その想いの存在を証明していた。
がこの想いに気づくには、まだもう少し時間がかかりそう。
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