ドリーム小説
一幕を終え、踊り子や演奏者たちが休憩に入り、人々は再び酒とご馳走に夢中になる中で
にこにこ顔のアラジンとアリババ、それからモルジアナを前に、仮面を外したは照れくさそうな顔で笑った
「上手く隠れたつもりだったのですが。どうしてばれてしまったのでしょう」
よく知る人にこの衣装を見られるのが気恥ずかしくて、ずっと仮面をつけっぱなしでいたのにとは言う
それに加えて休むことなく壇上で踊りに興じていれば声をかけられることもない
けれどまさか幼い子どもたち三人に見つかってしまうとは
「一度はシャルやピスともすれ違ったのですがばれなかったのですよ」
「ふふ。残念だったね、おねえさん。かくれんぼは僕たちの勝ちだよ」
「うーん、そのようですねぇ。潔く、負けを認めるといたしましょう」
「はは!やったな、アラジン。モルジアナ」
ミッションコンプリート。三人はハイタッチをして笑いあった
としてはただ単に人目を避けて隠れていただけなのだが
どういうわけか、いつの間にか三人組のかくれんぼのターゲットにされていたらしい
よくわからないが、けれど三人の子どもたちが楽しそうなのでまぁいいかとも笑った
「けど、さんなんで隠れるんですか?すっごく綺麗なのに」
「うん。僕も、ここにいるおねえさんたちの中で一番綺麗だと思うよ。ね、モルさん」
「えっ。あ、はい。私も・・・とてもよく似合ってると思います」
「あらあら。ありがとうございます。そんなことを言っていただけるなんて・・・光栄ですわ」
「あっちにシンドバッドおじさんたちもいるよ。みんなのところには行かないのかい?」
「えぇ。褒めていただいて申し訳ないのですが・・・やはりこの姿を見られるのは苦手なのですよ」
普段官服を着込んで肌を隠している分、露出の多いこの衣装は照れくさいのだと彼女は眉を下げて笑う
「もったいない。師匠なんて絶対鼻の下伸ばして喜びますよ」
「ふふ。シャルはほとんどの女性にそうですよ。ずっと前の謝肉宴のときは、一緒に踊りましょうと誘われましたし」
「あー・・・すっげぇ想像できます」
酒と綺麗な女性に目がない師の行動が大いに想像でき、アリババは頬を掻いて苦笑する
しばらく四人は談笑していたが、テーブルに新たな料理が運ばれてきたのを機に散会することになった
別れる間際、彼女は一つだけ気になっていたことを三人に訊いた
「それにしてもお三方。この大勢の中、よく私がここにいることがお分かりになりましたね」
同じ体格、同じ衣装の女性は多い。それにずっと仮面をつけて踊り子の中に紛れていたのに
疑問に思っていたことを問うと、三人はそれぞれ違う顔をした
モルジアナは無表情のままで、アラジンは「それはね」と少年らしい笑みを浮かべている
けれど何故かアリババだけはボッと耳を赤くして、気まずげに視線をそらしていた
「アリババ君?」
「あ・・・やぁ・・・それはですね」
「・・・?」
何か照れさせるようなことを訊いただろうか。は首を傾げる
するとアリババに代わってアラジンが理由を教えてくれた
「シンドバッドおじさんがおねえさんを見つけるヒントをくれたんだ」
「シン王が、ですか」
「ね、アリババくん」
「あ・・・あぁ・・―っ」
そう言うとアリババの顔の赤みがまた少し増した。は更に詳しくアラジンから話を聞く
そしてシンドバッドが授けたというヒントを聞いた彼女は、アリババが赤面する理由を理解するのだった
この大勢の中、まごうことなく彼女を見つけられる大きなヒント。それは・・・――
*
王宮から見下ろす城下町では、人々が宴の片付けに勤しんでいた
料理を片付けたり、焚き火を崩したり、楽器をしまったり
オブジェとして飾られていたアバレウツボの頭部も男たちによって荷車に乗せられていく
そんな光景をはシンドバッドの部屋でお茶の用意をしながら見下ろしていた
もうそろそろ酔っぱらった主が戻ってくるだろうと思っていればタイミング良く部屋の扉が開いた
「おかえりなさいませ、シン王。今宵も随分とお飲みになられたようで」
「ん?なんだ。居ないと思ったら、もう戻っていたのか」
「お茶の用意ができております。酔いを醒まされますか?」
「あー・・・いや、後でもらおう」
軽く手を振って断ると、シンドバッドはが立つ窓辺へと歩み寄ってきた
だいぶ飲んだのだろう、彼の顔色はほんのりと朱い
だが酒のせいで上機嫌なようで、眠そうな目をしながらも口元には笑みを浮かべ表情は緩んでいた
やや千鳥足でやってきた彼はの背後にまわると覆い被さるように彼女に抱きついた
彼女の肩に顎を乗せ、すでに官服に着替えた彼女の体を抱きしめる
彼の体温とシンドリアの果実酒の香りに包まれ、は静かな声で「シン?」と彼を呼んだ
「どうされました?」
「何を見ていたんだ」
「え?あぁ。いえ、別に。宴の片付けをする民の様子を」
「それだけか?その割りには随分と優しい眼差しだったが」
「そうですか?」
言われて初めて知る、自分がそんな顔で城下を見つめていたことを
でも理由はわかる。きっとそれは、この人も動植物も穏やかであたたかい平和な国に自分が幸せを感じているから
そんな彼女の気持ちが彼にも伝わったのだろう
の肩に顎を乗せたシンドバッドは緩やかに唇をもたげて笑った
「。宴は楽しかったか?」
「そうですね。久々でしたし。十分楽しませていただきましたわ」
「そうか。ならいいが」
「何故そんなことをお訊きに?」
「いや。楽しかったと言う割りにはもう着替えてしまって、仕事モードに切り替わるのが随分と早い気がしてな」
若干いやらしげな色を含ませてシンドバッドは彼女の耳元で囁いた
そんなは、髪型や髪飾りは宴のままだが、今はもう踊り子の衣装の上に官服を羽織って帯を締めていた
するとの唇から呆れ気味のため息がこぼれた
「あら。そうさせたのは、どこのどなたでしょうか」
ため息をつきながらも、だが彼に反論する彼女の唇は楽しげにうっすらと笑っていた
「私は私なりに、人混みに紛れてひっそりと穏やかに宴を楽しんでおりましたのに。私を探し出そうとする子どもたちに
どこかの王様が不要な一言を吹聴してくださったおかげで彼らに見つかってしまいまして」
結果、早々に背を隠さなければならなくなってしまったのですよ
彼女らしい上品で柔らかな反論だった。それに対してシンドバッドが楽しげに肩を揺らす
「すまないな。少し悪ふざけが過ぎたか」
「私よりも、あなたの意地悪にあてられたアリババ君が可哀相でございます」
は眉を下げて困ったような顔で苦笑する
思い出すのは、あのときのアリババの赤い顔
シンドバッドは三人組に与えたヒントを反芻した
―――背中の中心に逆さ三日月のようなアザがある人を探してごらん
このヒントを与えられ、「それなら見つけられるかも!」と喜んだのはアラジンとモルジアナだけ
年頃のアリババだけがシンドバッドの言葉の裏を読み取れてしまい、思春期男子の興奮を高めてしまったのだった
どうしてシンドバッドがの体にそんなに詳しいのか・・・・・その理由は一つだ
「構わないさ。俺たちの関係を口で言う手間が省けただろう」
子ども相手に意地悪な悪戯をしておいて、シンドバッドはしれっとしていた
反省する気もないのだろう。飄々とした態度で、彼の手はすっとの帯紐を引いていた
はそれを止めるでもなく彼の好きにさせてやる
「何ですか、この手は」
「ん。そろそろ後夜祭の時間かと思ってな」
「シン・・・あれだけ女官たちを膝にお乗せになって、まだ足りないと?」
「あぁ、足りないな・・・――全然お前が足りていないよ」
不意に、甘い台詞とともに彼の声に熱が帯びるのを彼女は感じた
完全に解かれた帯紐が足下に落ちたのを察し、緩く肩から官服がずらされた
現れた白い肌に彼の唇が押しつけられ、酒で高まった唇の熱さに細い体がふるりと震える
「」
「・・・――」
低く掠れた甘い声で呼ばれ、は彼のいる後ろに首を向けた
目があって、悪戯っ子のように笑う彼は「一曲だけ」とねだる
主君の我が儘に、けれどは決して自分がノーと言えないことを知っている
ついさっきまで彼の意地悪さを咎めていたはずなのに・・・あぁ、どこまで自分はこの主に甘いのだろう
「仕方がありませんね・・・」と彼女はしょうがなさそうに笑う
「お付き合いいたしましょう」
の答えにシンドバッドは満足そうに笑って彼女にキスをする
月の光が照らす優しい暗闇の中、官服が床に落ちる柔らかい音が部屋を満たした
最後のワルツはやっぱりあなたと
※むっつりエロ葉王様が好みです。最後までありがとうござました
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