ドリーム小説
※9巻/80夜『八人将』・81夜『謝肉宴の夜』
それは海の恵み
北東の沿岸にアバレウツボが出たという伝令が王宮に届き、シンドバッドによって八人将が招集された
今回の仕留め役はシャルルカン。巧みな剣捌きでアバレウツボを解体し、盛りつけまで施してみせた
南海生物は海の恵み。国をあげての盛大な謝肉宴の始まりだ
「。モルジアナに服を見繕ってやってくれ」
王宮に戻ったシンドバッドは書類処理をしながらにそう命じた
傍らで次の書類を用意しながらは笑顔で頷く
「お任せください。誰もが振り向くような女の子に仕立て上げてみせましょう」
「そうか。楽しみだな。あぁ、。自分の用意も忘れるなよ」
「え?」
「え?じゃない。お前も出るんだぞ、謝肉宴」
当たり前だろう、という顔でシンドバッドは言う
けれどは眉を落として困ったように笑った
「私は結構ですよ。明日までの書類が残っておりますし、城の窓から眺めさせていただきます」
「何を言う。国をあげての宴だぞ。国民は全員参加だ」
祭好きのシンドバッドは喜々としてを諭す
も謝肉宴が嫌いな訳ではなかったが、あえて参加を渋る理由を挙げるとしたらそれは一つ
「参加するのは構いませんが、・・・どうもあの衣装を着るのが少々躊躇われまして」
謝肉宴の夜は女性は皆踊り子のような衣装を纏い、客人たちに花飾りを配って回ることになっている
その衣装が大変露出が多く、普段官服で肌を覆っているの表情を困らせていた
シンドバッドは彼女の躊躇いを打ち消すように陽気に笑う
「そうは言うがな、シャルルカンなんて毎回お前の衣装姿を楽しみにしているんだぞ」
「何をおっしゃいます。私一人いなくとも、シャルの周りには美しい女性がたくさんおりますよ」
「そうか?なら言い替えようか。お前の踊り子姿を一番楽しみにしているのは俺だ」
「シン王・・・。もうおやめくださいませ。単純な私は簡単に自惚れてしまいます」
「自惚れていいじゃないか、お前なら」
書類に印を押す手をとめ、シンドバッドは傍らのを見上げた
目が合うとシンドバッドは少しだけ意地悪そうに笑って言った
「たまには自分から脱いだらどうだ。その暑苦しい官服を」
その言葉の裏に夜のことを含ませ、シンドバッドはにやりと笑う
悪戯な彼に、けれどは流されることなく目を閉じて静かに微笑んだ
「そうですね。あなたがお望みならばいくらでも。ただやはり・・・人前に肌をさらすのは少々苦手なのです」
目を開けた彼女の微笑みは、少しだけ哀しげになっていた
その理由をシンドバッドはよくわかっている
だから静かな笑みを返し、彼は書類に目を戻して押印の続きを行いながら告げた
「心配せずとも、この国には『あの頃』のお前を卑下する者はいない」
「そうですね・・・」
自分を安心させようと気遣ってくれる彼に、は「さすがは貴方の国です」と礼代わりの返事を返した
*
謝肉宴が幕を開ける
初めて見るシンドリアの宴の盛大さにアラジンもアリババも興奮気味ではしゃいでいた
「女の人たちも、今日は特別おめかしだねぇ」
「ほんとだな〜!・・・あれ?そういやモルジアナは?」
アリババがいつも行動をともにしている少女の不在を問えば、今し方花輪をかけてくれた少女が彼の袖を引っ張った
仮面をとればその少女こそがモルジアナで、あまりの変わりぶりにアリババは驚愕するのだった
「女性はこれを着て花を配れと言われたので・・・」
「モルさん、すっごく似合うよ〜」
「そうですか?さんに着せていただいたんですが」
「じゃ、おねえさんも今日はモルさんみたいな服着てるのかい?」
「たぶん。女性はみんなそうだと思いますが」
「うわぁ、楽しみだなぁ。ね、アリババくん」
「え・・・?あ、・・・そ、そうだな!」
モルジアナの姿に目を奪われていたアリババは慌ててアラジンに同意して誤魔化した
その後はそれぞれ思い思いの楽しみ方で宴を満喫した
その頃シンドバッドもまた八人将とともに大いに宴を楽しんでいた
両足に麗しい女性を乗せ、順番待ちする女性に囲まれながら陽気に笑う
けれどそこには祭りに参加するよう命じたの姿はなかった
「王サマ〜・・・さんは来てないんすかぁ?」
「シャルルカン、お前だいぶ酔ってるな」
すでに呂律が回らないほど飲んでいながら、シャルルカンはここにいないを気にしていた
確かに辺りを見回してもの姿はなかったが、けれど彼女がちゃんと祭りに来ていることをシンドバッドは知っている
そこへ、シャルルカン同様に彼女の姿に興味を抱く少年たちがやってきた
「シンドバッドさん。さんは今日来てないんですか?」
「さっきからずっと探しているんだけど、どこにもいないんだよ」
「あぁ。彼女ならちゃんと来ている。ただ、宴の衣装を人に見られるのが恥ずかしいらしくてね」
仮面をつけてどこかに隠れているよ、とシンドバッドは三人組に笑って聞かせた
「どこかにいるはずだ。水色の髪に紫紺のピアスをつけている女性を探してごらん」
「え。でもそんな人、今日はいっぱいいてわからないよ」
「確かにな。俺なんて髪型がいつもと違うだけで見間違えちまうしなぁ」
「ねぇ、モルさん。おねえさんの匂いでわからないかい?」
「それが、今日は皆さん何かしらの香水をつけているので匂いが混じっていて・・・」
小さなヒント一つでは探しようがないと三人は腕組みをしてうなる
そこでシンドバッドはもう一つだけヒントを与えてやることにした
「なら、もう一つ良いヒントをあげよう」
人差し指を立てて得意げに笑いながら、シンドバッドは耳をそばだてる三人組にもう一つの重要なヒントを授けた
※中編に続きます
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