ドリーム小説
※8巻/77夜『シンドリア王国』・78夜『魔法使い』 シンが煌帝国から帰ってきたら二人ともでぶーんのお話
シンドバッド王が煌帝国から帰国したのは出立から四ヶ月後のことだった
久方ぶりに戻ったシンドリアは出立前と変わることなくシンドバッドを安堵させた
まぁ国政のすべてをジャーファルとに任せていたのだから心配などもとより不要だが
「ご無事のご帰還、何よりです。シンドバッド王よ」
「あぁ。長い間留守にしたな、ジャーファル」
「留守中の国事はつつがなく」
「そうか」
ジャーファルを筆頭に八人将より五人のメンバーが迎えに現れ、シンドバッドの顔にも笑みが浮かぶ
国の方は大事なさそうだ。それよりもむしろシンドバッドが心配していたのは食客の少年たちの方だった
「・・・で、二人はどうしてる?」
アリババたちが暮らす塔へ進みながらシンドバッドは彼らの状況をジャーファルに訊いた
ジャーファルは眉を下げ、王が出立してもしばらくは部屋にこもりがちで食事もろくにとっていなかったと話した
けれどその後にあったことを話し始めると、彼の顔は少しずつ和らいでいった
「でも、近頃は元気を取り戻したんですよ」
「そうか。それはよかった」
「それもこれも、さんのおかげです」
ジャーファルは今ここにいない彼女の活躍を喜々としてシンドバッドに語った
「さんがアリババ君を説得してくれたおかげで彼も食欲を取り戻し、なんとか持ちこたえてくれましたからね」
「そうか。やはり彼女に任せて正解だったな」
「ということは、やっぱりシンはこうなることを予測していたのですか」
「いや。あわよくばと期待していただけに過ぎないさ。良い方に転じたのは紛れもなくのおかげだ」
彼女には人を惹きつける力があるからな、とシンドバッドはまるで自分のことのように自慢げに話す
「それに、彼女ならアリババ君の生きてきた道を理解してやれるだろう?」
「え・・・、あ。なるほど。シンはそこまでお考えでしたか」
シンドバッド同様の過去を知るジャーファルは納得したようだ
納得はできたが、けれどそばかすの散った彼の顔は決して明るくはない
それは彼も知る、の過去の重たさを物語っている
「彼らは最愛の者を失ってもなお戦い多くの人々を救った。ならそんな彼らの痛みと苦しみをわかってやれる」
強気でそう言い切れるシンドバッドはを心から信頼しているのだろう
彼女の過去を知りながら、彼女の痛みと苦しみを知りながら、あえて彼女に少年たちを任せたのがその証拠だ
の過去の傷を抉ることは同時にシンドバッド自身の傷を抉ることにもなるのに
それを知っているジャーファルは「やれやれ」と心の中でため息をつき苦笑した
「早く二人に会って報告してやりたいな」
「そうですね。おや、噂をすればですよ」
シンドバッドはバルバッドを救った英雄の少年二人に伝えたいことがたくさんあった
四ヶ月ぶりの再会となる。少しは背が伸びたりと成長しているのだろうか。そんな期待もあった
しかしこの後アリババとアラジンに再会したシンドバッドは
「シンドバッドさん!!お帰りなさい!!」
「おかえりなさい!シンドバッドおじさん!」
ポヨンポヨンにデブーーーーーンと化した二人の姿に
「・・・。あぁ。ただいま」
地味に大きな衝撃を受けることになるのだった
*
かくしてシンドバッドの「走れ」の一喝により、アラジンとアリババのダイエットが始まることになるのだった
その話はここでは割愛するとしよう
それよりもシンドバッドはいきなり太った少年二人のことを彼女に訊かないわけにはいかなかった
大事な来客の接待を終えたはすぐにシンドバッドの私室に呼ばれることとなり
部屋に入ればが「おかえりなさいませ」と言うよりも早く彼に、
「疲れたから風呂に入るぞ」
と言われ、呆気にとられてしまうのだった
呆然とするを尻目にシンドバッド本人はさっさと奥の浴室に行ってしまう始末
勝手我が儘とも思える言動だったが、けれどにはそれだけで彼の言いたいことが伝わるのだ
「疲れたから風呂に入る。湯浴みを手伝え。そこで話は聞く」ということだろう
は困ったように片方の眉を下げて笑い、すぐに袖まくりをして湯浴みの準備をするのだった
チャプン・・・―――
水のはねる音が浴室特有の響きを加えて天井に昇っていく
大浴場とは違う、私室に作られた簡素な浴室は猫足の白いバスタブとシャワーしかない
シンドバッドは真っ白なバスタブいっぱいに汲まれた乳白色の湯に浸かり、王らしく両腕を広げて堂々とくつろいでいた
彼が頭を寄りかからせる側には浴室用の椅子に腰掛けて彼の頭を洗ってやっていた
「あー・・・」
「あらあら。随分とお疲れのご様子で」
「いや。これは極楽のため息だ・・・相変わらず巧いな、」
「お褒めにあずかり光栄ですわ」
両手を石鹸の泡でいっぱいにして彼の長い髪を洗いながらはにこりと笑ってみせる
濡れないように両袖をまくってタスキで留め、それから長いスカート状の官服を太腿の中間まで捲り上げている
普段官服で隠している彼女の肌は雪のように真っ白で華奢だった。触れれば折れそうな腕も足も腰も
けれど夜になればその細い体は彼の下で妖艶なほど柔らかくしなりあがることをシンドバッドだけが知っていた
「ところでな。お前に頼んでいたアリババ君とアラジンのことなんだがな」
「はい」
「二人が元気になってくれたのはいいんだが・・・、・・・まさか肥満体になっているとは予想外だった」
「あー・・・あはは。はい、弁解するつもりは微塵もございません。すべては私の目が行き届かなかったせいなのです」
髪を洗う手を一度止め、は「申し訳ありませんでした」と謝罪する
だがシンドバッドは別に彼女を咎めるつもりなどなかった。それよりも何があったのかを聞きたかった
「食事はとれるまでになったのだろう」
「はい。貴方が出立されてから十日ほどで」
「なら何が原因で『食べ過ぎ』にまでなったんだ」
シンドバッドは寄りかからせていた頭を深く後ろに倒し、彼女の顔を逆さまに覗き込んだ
は困った顔で笑っていた。それから渋々という感じで話してくれたのだが
は毎日のように三人の部屋に行っては話をしたのだった
特にアリババとは根気強く話をし、心折れそうな彼を励まし、何とか食事をとってくれるまでに回復させられたのだった
次第に彼らの表情も回復していき、少しずつ笑顔も見せてくれるようになり、もホッとしていた
三食きちんと食べられるようになり、もう大丈夫だろうと感じたのがシンが出立してから三ヶ月後のこと
アラジンとアリババの体が徐々に膨れ始めたのはここ一ヶ月間のことだった
そうなってしまった原因をは申し訳なさそうに話した
「実は、三度の食事以外にも侍女たちやジャーファル君が何度かおやつを食べさせてあげていたようで・・・」
時たま落ち込んだ顔で空を見上げてはため息をつく少年二人を見かけては、彼らが何か食べさせていたらしい
話を聞いたシンドバッドはその様子が容易に想像できてしまった
侍女たちもそうだが、ジャーファルも小さな子どもには滅法甘いのだ
「なるほどな。一日に五食も六食も食べていればあぁなるはずだ」
すべて理解し納得した王は、済まなそうな顔で見下ろしてくる彼女を見上げ、「ご苦労だった」と苦笑して労ってやった
パシャン・・・―――
バスタブの中で彼が足を組み直すたびに乳白色の湯がわずかに零れてタイルの上を這っていった
洗い終えた彼の頭をバスタブの縁に寄りかからせ、は柔らかいタオルで拭いてやった
尻尾のように長い後ろの髪は、椅子に座った自分の両足の上に乗せたタオルの上に束ねておくのが常
頭を拭くタオルがリングのピアスに触れるたびにシャランと綺麗な金属音が鳴った
「そうか。モルジアナはマスルールと稽古を」
「はい。毎日森に行っているみたいで。ファナリスの血もありますがモルちゃん根が真面目な努力家さんだから」
この四ヶ月でメキメキと力をつけているとは嬉しそうに語る
シンドバッド不在の間のシンドリアの様子を彼に話して聞かせた
彼女の話をシンドバッドは目を瞑って頭を拭かれながら聞いていた。それはまるで子守歌のようだった
「シン。煌帝国はいかがでしたか」
「ん?煌帝国か。ふむ・・・・・そうだな・・・・・広すぎて一言では言い尽くせないな」
「あら。ではお土産話をたくさん聞かせていただけそうですね」
「あぁ。まず何から話そうか」
「そうですね。・・・。あ、でしたら」
は彼の頭からタオルを優しくどかし、乱れた髪を手櫛でとかしながら言った
「額をお貸しいただければ」
自分の能力で貴方の過去を少々見させていただければ早いです、と提案した
するとシンドバッドはまた逆さまに彼女を見上げてきた。は彼が額を預けさせてくれるものだと思い、
互いの顔が逆さまの向きのままゆっくりと彼の額に自分の額を近づけていった。けれど
「いや。それはいい」
「え?」
あと少しで額同士が触れ合うところで彼に止められ、次いで彼の両手に頭を掴まれそのまま引っ張られた
小さな音を立てて王の口付けが彼女の額に落とされた
湯で濡れ、温められた唇を額に感じ、彼女の目尻が少しだけ朱に染まる
すぐに額は放され、は顔を起こして不思議そうな目で彼を見下ろした
「シン?」
どうしたんですか?と瞳で問いかける
するとシンドバッド王は眼を細め、唇で弧を描いて彼女に笑いかけた
「今度は俺が話す。煌帝国であったことを全部話すよ」
「シン・・・?」
「お前に聞いていて欲しいんだ」
額を合わせてしまえば一瞬で終わってしまう
お前のその力は好きだけれど
今は離ればなれになっていた長い時間を一緒に埋め合わせたいから
「少し時間がかかってしまうが」
そばで聞いていてくれるか?
そう問いかけてくる彼の笑顔に、彼女も笑って「喜んで」と答えるのだ
真上から見下ろす彼の額に、今度は彼女が優しく口付ければそれが合図
そして始まる彼の物語
※シンの私室完全捏造です
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