ドリーム小説
※『神様の気紛れと悪戯に踊らされてるだけ、それが人生』続き
一日の中でもっとも静かな時間帯は夕食を終えて船員のほとんどが就寝する夜
今日は昼に戦闘があったせいか、船員のほとんどが疲れて眠りについていた
そんな中はマストの上の見張り台で夜の海に目をこらす
本日の見張り当番は1番隊
昼間の戦闘で役に立てなかった分、が自分から見張りを申し出た
敵はどこから来るかわからないから気が抜けない
遙か向こうの水平線からか、はたまた潜水艇で海中からか、時には能力者が空から奇襲攻撃をかけてくることもある
常識が通用しない海、ここはグランドライン
四方八方にアンテナを張り巡らしていたの視線は、けれどふと真上でとまる
「わ・・・月、綺麗」
空を仰げば真ん丸に近い月がぽっかり浮いていてその周りに綿雲が漂っていた
小さなため息がの口から零れる
月を眺めながら彼女はここ数日のこと・・・不死鳥になれた日々を振り返っていた
(思えば貴重な体験だったなぁ・・・)
カナヅチになる代わりに手にした能力は怪我をしても再生できるというもので
便利な力のおかげでちょっとしたことでできた傷もすぐに治ってしまい、ここ数日は無傷な日々を送れていた
(おっちょこちょいな自分には嬉しい力だったなぁ)
見張り台の手すりの上に両腕と顎を乗せて、まるでお風呂でくつろぐような格好では小さく笑う
ふと
「・・・」
何を思ったかは腰から小刀を取り出すと、切っ先を左手中指の腹に当ててスッと横に引いた
「ぃ、ち・・・っ」
すぐに赤い線ができ、丸い血の球がぷくりと浮き上がった
血の球は手のひらを伝って手首の方へと流れ落ちていく
能力があったときは怪我をするとすぐに蒼い炎が傷口を覆って、炎が消えると傷は癒えていた
けれど今はもう傷が癒えることもない
「再生しない・・・。本当に元に戻ったんだ」
「何やってんだよい」
「・・・!」
バサリと翼を羽ばたかせる音
闇夜に浮かぶ蒼い炎
いつの間にやってきたのか、の目の前に両腕だけ翼に変えたマルコが浮いていた
「隊長」
「よっ、と」
がいる見張り台の手すりに降り立ち、不良少年(訂正。不良中年)のような格好で座り込む
蒼い炎が少しずつ消えてマルコは人間の姿になっていく
完全にヤンキーの座り方で片手を「よっ」と軽くあげた
「見張りご苦労さんだよい」
「危ないですよ、そんな格好で。落ちたらどうするんですか」
「心配ねぇさ。落ちたら飛ぶよい。それよりも、だ」
マルコはぶすっとした顔でおもむろに彼女の腕をとった
「・・・!なんですかっ?」
「なんですかじゃねぇよい。何やってんだ、自分の体傷つけて」
「あー・・・、能力が消えたかどうかの再確認を一応」
たははと笑うにマルコは呆れたため息をついて掴んだ彼女の手を自分の方に引き寄せた
細く折れそうな手首、海賊とは思えないほど白く細い指先に一筋の赤い線
結構深く切ったらしく、まだ血が止まらない
「ったく」
「・・・?へ・・・っ!?」
呆れながらもマルコは躊躇することなく彼女の傷ついた指を口に含んだ
突然の彼の行為に驚いたのはの方
彼の熱い口内でざらりとした舌に血の跡を舐め取られた
丹念に、丁寧に、それはまるで傷ついた仲間を癒す獣のような仕草
自然との顔が赤くなる
「隊長・・・」
「なんだよい」
「あの・・・放してほしいのですが」
「なんで?」
「・・・なんか恥ずかしいというか、・・・やらしいです」
「変なこと想像してんじゃねぇよい。まったく。もう再生しねぇんだから、滅多なことで怪我しないようにしろって」
「はい・・・」
「自分から怪我作るなんてもってのほかだよい」
「・・・すみません」
「ごめんで済めば海軍はいらねぇって話だ。あぁ・・・、鉄の味がする。くそ不味ぃよい」
マルコは渋い顔でぺろりと小さく舌を出す
その舌はの血を舐めたせいか、月夜の下でやけに赤く見えた
舐められた指先を意識している彼女をマルコは横目でとらえる
「」
「はい」
「口直し」
「はい?・・・!?」
手すりに座った不良中年にいきなり後頭部を引き寄せられ、押しつけるようなキスをされた
がっちりと後頭部を押さえ込まれ逃げられない
「ん・・・っ、・・・ぅ」
絶妙な角度で唇を重ね合わせてくるあたりは超えられない大人の経験値なのだろう
いつもは唇をあわせるだけのキスだけれど、今夜は少し違った
さっきの傷をなめた彼の赤い舌が唇を割って入ってきた
ぬるりとした生々しい感触に体の芯が熱くなる
彼と初めてする少し大人のキスは、マルコが好む煙草の香りと錆びた鉄の味
「・・・は、・・・っ」
「いい顔してるよい」
「な・・・んなんですか、もう。誰かに見られたらどうするんですか・・・」
「や。血ぃ舐めたせいかねぇ。ムラッときて」
「発言がいちいちエロオヤジです」
「はぁ、言うねぇ」
にやりと笑ってマルコは手すりから見張り台の中へと飛び降りた
また何かされるのではと警戒するの腰を引き寄せ、彼女の体を反転させて後ろから抱きしめる
耳元で囁かれる彼の声には余計に緊張してしまう
「逃げるなよい」
「・・・だって」
「だって?」
「・・・ふ、二人きりになると隊長なんだか怖いんですもの」
「怖かねぇよい・・・。命の恩人に向かってひでぇな」
今日一日だけで二度も助けたのによい、とマルコは唇をとがらせる
あぁそういえばそうだったと、は思い出す
「お礼のチューくらいあってもいいだろうよい」
「・・・チュー、ですか」
「奮発してくれんならセック×」
「却下で」
すっぱりと切られてしまい、マルコは残念そうに「ちぇ・・・」と舌打ち
拗ねてしまった彼はつれない彼女を抱きしめる腕に力を込めて我が儘を露わにする
隊長格の力でギリギリと締め上げるように抱きしめるからにとってはたまったもんじゃない
「痛い痛い・・・っ、痛いです、隊長!」
「知らねーよい・・・。・・・あぁ、月が綺麗だなぁ」
の非難を無視して夜空に浮かぶ黄金の月に感嘆する
締め上げがようやく解除されてはホッと息をしてマルコと同じ月を仰ぐ
「満月は赤すぎる。あれぐらいの黄色いがちょうどいいよい」
「そうですね。紅い月って、少し怖いですよね」
まるで血を吸って輝いているようで身が竦むときがある
今浮かんでいるくらいの黄金色がちょうどいい
「今夜の月ぐらいの色の方がちょうど不死鳥の蒼さに一番合ってますね」
「そうかよい。ありがとよ」
「隊長・・・」
「ん?」
「よかったですね。能力が元に戻って」
「あぁ。やっぱりこっちの方がしっくり来るよい」
マルコはニッと笑って、の眼前で指先にだけ蒼い炎を灯してみせる
「お前ぇに守られんのも悪かねぇけど、やっぱり守る方がいいな」
「なぜです・・・?」
「再生するとわかっていても好きな女が傷つくのは見たかねぇよい」
「・・・、」
たまに言われるキザな台詞
の頬がほんのり赤く染まったことは言うまでもない
「でも、短い時間でしたが能力者になることができて楽しかったです」
「そうかい」
「隊長がどんな想いでずっと戦い続けてこられたのかが少しだけわかった気がします」
「・・・」
「親父様や私たちを守ってくださる不死鳥の苦しみを共感できたので、よかったです」
彼の喜びも苦しみも
彼の見る世界も
少しだけだけど共有できたことが嬉しい
そんな彼女の優しい想いは勿論彼の心にじわじわと染み渡っていくわけで
を抱きしめて後ろで大人しくしていた彼が口を開く
「・・・」
「はい?」
月を眺めたまま返事をする彼女の頬に不意打ちのキスをひとつ
驚いて振り向いた彼女の唇に熱く重なるキスをひとつ
しっかりと舌を絡ませ彼女の熱を上げていく
音を立てて一度唇を放し、恍惚とする彼女を見下ろして不敵に笑う
「な、に・・・っ?」
「ったく。そういう可愛いこと言うお前ぇが悪いんだぜ」
「な・・・にも、可愛いことなんて言ってな、」
「せっかく二人っきりの夜だってのに、何事もなくなんて終わらせられねぇよな」
「・・・!?」
月夜に不死鳥が妖しく微笑み舌なめずりをする
顔を引きつらせて畏怖するを無視して、マルコは抱きしめた彼女の体を見張り台の手すりより下へと引き摺り込んでいく
最後に聞こえたのは彼女の甘い悲鳴ひとつ
囚われのお姫様みたいだ
「あれ?今日の見張り当番ってだったよな」
「あぁ。・・・あれ?いないか?」
「いや、あいつならさぼったりしないと思うけど」
おかしいな、と見張り台を見上げた船員たちは
一瞬だけボッと燃え上がって消えた蒼い炎にすべてを理解するのだった
※まとめになってない・・・!
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