ドリーム小説
※『無様だって、笑ったっていいよ』続き
君から離れてみてわかったことがある
マルコがから離れて2週間ばかりが過ぎた
マルコが日に日にやつれていくのを1番隊の隊員たちは心配そうに見守る始末
敵との戦いに支障はないが、覇気の感じられない彼の背中にサッチは呆れたため息をつく
「・・・たかだか2週間で見るも無惨だな、おい」
「・・・うるせぇよい」
船の縁に背を丸めて腰掛けるマルコは、気を抜けばそのまま背後の海に落ちてしまいそう
「今夜は宴会だってよ。ハルタの隊が結構な賞金首獲ってきたって」
「・・・そいつぁ良かったよい」
「めでてぇ夜だ。もちっと元気出せよ」
「・・・おぅ」
返事はするもののマルコの重たいため息にサッチは呆れてその場を離れる
(・・・はぁ)
空を仰ぐ
青い空にはモビーディックを追いかけるようにカモメが何羽も飛んでいる
君から離れてみてわかったことがある
陽がとっぷりと暮れ、船内もあらゆるところでどんちゃん騒ぎ
あちこちで酒瓶やグラスがぶつかり合う音がする
宴会が始まったときは全員いた食堂
一体いつの間に、そんな騒ぎの中から姿を消した者が一人
(・・・?いない・・・)
みんな酔っぱらって酒池肉林状態の中で不在者の存在に気付いたのはだけ
大声で笑い合う仲間の間をすり抜け、はこっそり食堂を後にした
*
月夜の下、耳に心地よい波の音
みなに気付かれないようにこっそり宴会場を抜け出していたマルコは一人船の裏側で酒瓶を揺らしていた
船の縁に寄りかかり月を仰ぐ
(あぁ・・・、・・・頭まわんねぇよい)
酔っぱらっているせいか月がぼやける
手すりを背にしたままズルズルと床に座り込み両足を左右に適当に投げ出す
静かに目を閉じ、薄く唇を開けば
「・・・」
ぽつりと零れるのは彼女の名前
寂しかった
寂しくてしかたがなかった
彼女に近づかないと自分に課した戒めとはいえ、こんなにも自身を苦しめるとは
「・・・、・・・・・・」
迷い子が母親を捜すように何度も呟く
静かな船の裏側に誰かが近づいてくる気配がした
殺気は感じないからマルコは気を抜いて目を閉じ続けた
「隊長」
鼓膜を揺する聞き慣れた声
今し方名前を呼んでいたの声だ
マルコはゆっくりと目を開け、緩慢に顔を上げる
彼女が自分の横に膝をついて目線を同じくしていた
「どうしたんですか、こんなところで。風邪ひきますよ?」
「・・・」
久々に聞く、自分に向けられた彼女の声
この2週間その姿を見つけその声を聞くたびに自分を抑えていた
「・・・」
「はい」
「・・・」
「ふふ」
「・・・?なんだよい」
「なんだか久しぶりですね。こうして隊長と言葉を交わすの」
「・・・。・・・それは」
「知ってます」
自分がに近づかなかった訳、情けない理由
は知っていると言って静かに笑う
「サッチさんに教えていただきました」
「・・・あのやろ」
「あ、サッチさんを責めないでください。私が無理言って教えていただいたんです」
笑う
自分がみっともなくてマルコは彼女から顔を背ける
が苦笑したのが分かった
「誤解・・・しないでくださいね」
「・・・何をだよい」
「エースにしたこと、です」
「・・・」
「私はエースを助けるために」
「わかってるよい」
の言葉を途中で遮る
マルコの声はやや強めで、は眉をひそめる
「わかってるよい。お前ぇにとってエースは大切な存在で、エースのために命がけでしたってことは」
「・・・わかってないですよ。エースだけじゃない、私にとっては船員みんなが大切な存在で」
「なら」
苛立つマルコの声
話せば話すほどマルコの語気は荒くなるばかり
眉を下げるにマルコは意地悪に問いかける
「なら、もし落ちたのが俺でもお前ぇは同じように助けてくれたのかよい」
「・・・、・・・」
俯いていたマルコが顔を上げてと目を合わせる
こんな質問の時だけずるいと思った
は返事に困ってしまう
黙り込む彼女の姿にマルコは肩を揺らして意地悪く笑う
「良かったよい、落ちたのがエースで」
「・・・」
「はは・・・、・・・羨ましくてしかたねぇよい、あいつが」
そう言ってマルコは船の手すりに背を預けて空を仰ぐ
泣いてはいないだろう、でも片手で両目を覆っていた
「・・・隊長」
「・・・・・・」
「・・・マルコ、隊長」
「・・・・・・」
「・・・・・・あの」
「好きなんだよい」
「・・・、・・・」
不意に紡がれた愛の告白
今までも何度となくもらった彼の想い
そのたびには応えずにきた
本当に気持ちを受けとってもいいと思えるときが来たら唇に口付けをと言われて
「好きで好きでしょうがねぇんだよい」
彼の愛を受け止めることができなくて背を向け続けても
「抑えられねぇんだ感情が」
彼の愛が変わることはなくて
「お前ぇが誰かにキスしたなんて考えたくもねぇよい」
こんなにも臆病な私に
「苦しくてしかたがねぇんだ・・・お前ぇのこと考えるだけで」
あまりある愛をくれる
「隊長・・・」
あまりにも彼の声が切なくて心配になっては床に手をついて少しだけ距離を縮めた
空を見ていたマルコがに顔を向ける
マルコの腕が伸びてきて、の頬をするりと撫でた
冷たい体温
どうしてだろう愛しさを感じてしまうのは
「・・・あ、の」
「慰めの言葉なんていらねぇよい。だったら・・・、キスしてくれ」
苦しくてしかたがないのだ
息が、息が・・・
「真っ暗な海で溺れてる気分になる・・・・・・、息が詰まるよい」
光が何処にもない
上も下もわからない
海面に向かっているつもりで実は海底に潜っている
恐ろしくてたまらない
「・・、・・・っ」
がくりと首をうなだれるマルコが一瞬ぶるりと震えたのをは見た
唇を緩く噛む
何かを決心するように眉をひそめてゆっくりと目を閉じ、細く開いた
自分の頬を撫でる彼の手首をとる
まさかに腕を掴まれるとは思っていなかったマルコはゆっくりと顔を上げる
驚きの顔の彼を、もっと驚かせる魔法を彼女はかける
「・・・、・・・っ!」
酒の中にふわりと香る女の匂い
背中に堅い船の手すり
唇にあたたかな感触
ぼやけるほど近い距離で長い睫毛が揺れている
時間にしたらほんの数秒
しばらくして離れていった柔らかな感触
マルコは目を丸くしてを見やる
「・・・、・・・え・・・?」
「・・・」
きょとんとするマルコ
は目元を僅かに赤く染めてやや不機嫌そうな顔をそらす
「・・・」
「・・・なんですか」
「・・・」
「・・・じっと見ないでください」
「・・・なぁ、今のって」
「・・・」
「キ」
「スじゃありませんよ」
彼に言わせる前に自分から否定
もはやマルコと目を合わせることはできず彼女はそっぽを向いたまま言う
「人工呼吸です・・・。隊長が溺れていらしたので」
が使うにはらしくない言い訳
それはきっとキスの相手の性格がうつったせい
目を真ん丸にしていたマルコの顔が次第に崩れていく
こみ上げる笑いがとまらない
「は、・・・はは・・・っ」
「・・・な、・・・何が可笑しいんですか」
「いや・・・、・・・」
「・・・なんですか?」
「・・・やられたよい、お前ぇには」
「笑いすぎです、・・・隊長」
耳まで赤く染めて横を向く彼女に
マルコは片手で顔を覆ったまま肩を揺らし続けた
ひとしきり笑って、それから自分の方に向けた彼女の頬に再び手を伸ばした
顎のラインをそっと指で撫でて彼女の顔を少しだけ自分の方へ向かせる
照れているのだろう、仏頂面の横目で見てくる彼女に唇を引いて肩を揺らす
「何度も再生はしてきたが、生き返らせてもらったのは初めてだよい」
「・・・それはようございましたね」
意地っ張りな君へ
この胸から溢れ出しそうな愛をどうやってすべて君に伝えよう
「」
「はい?・・・っ!!」
振り向いてくれない彼女を思いきり抱き寄せて腕の中へ
意表を突かれて眉をつり上げる彼女の唇を今度は彼が無理矢理奪う
君から離れてみてわかったことがある
君の存在は僕にとっては空気も同然で
君から離れた瞬間僕は呼吸ができなくなる
もう僕は君のいない世界では生きられないということの再確認
それが君の真実なのかい
(ところで、さっきのキ)
(スじゃありませんから)
(・・・わかったよい。んじゃ、さっきの人工呼吸だが)
(・・・)
(恋人承諾ととっていいのかよい?)
(・・・・・・)
(なぁ、)
(・・・どうぞご自由に)
※マルコガッツポーズ!
やっとくっついてくれました(?)
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