ドリーム小説
ずっと男所帯の船にいるとわからないけれど
ときどき海から陸へ降りて街を歩くとわかることがある
「マルコ隊長って、もてるんすね」
パブの中、最近入った新入りの船員がの横の席でぽつりと呟く
二人はマルコやエースなど隊長たちが座るテーブルに目を向ける
「あ、ほら。また声かけられてますよ」
賑わう店内、綺麗に着飾った女性2人組がマルコに声をかけに行く光景
さっきから何度となく声をかけられている
そのほとんどはマルコ狙い
「すごいっすね。さすがは隊長」
「・・・」
「あれ?どうしたんすか、さん。顔が険しいっすよ?」
「へ?・・・や、そんなことは」
「別嬪が台無しッすよ」
飲みましょうとジョッキをすすめられ、飲み慣れない酒をは喉に落とす
けれど視線はチラチラとマルコの方へ行ってしまう
(そっか・・・。隊長、もてるんだ・・・)
直視するのもおかしいから横目でちらちらと様子を窺う
また別の女性がマルコに近づき、綺麗に化粧した顔で彼に迫る
キスしてしまうのではというくらいの急接近
見ているの方がドキドキしてきた
ここにいると落ち着かない
ここにいると不安になる
ここにいるとムカムカする
(私じゃなくても・・・いいんじゃないのかな?)
あんなにもてるのなら、自分なんかよりもっと美人の女性を選べばいいのに
選り取り見取りじゃないですか
飲み慣れない酒をぐいっと煽る
もはや完全にヤケ酒の域
「さん、さん」
「・・・なにか?」
「呼ばれてますよ」
「へ?だれが」
「さん、だと思います」
「誰に?」
「マルコ隊長に、ですね」
新入り君に言われ、は再び視線を彼の方へ
そこにはどっかりと椅子に腰掛け、見知らぬ美女を横にしてに向かって手招きするマルコの姿が
「・・・なんなんでしょう」
なんで呼ばれているのかわからない
けれど隊長の命令は絶対
は気が進まないまま席を立ってマルコの元へ
*
「お呼びでしょうか?」
「おぅ。呼んだよい」
「私に何か?」
「まぁな」
まぁな、と言われても・・・
は首を傾げて、それからマルコの隣にいる女性に目を向けた
びっくりするほどの美女
スタイルも抜群、細腕細足の守ってあげたくなる体
(わ・・・、綺麗な人)
自分も同じ女なのにこうも違うのか
素直に女性を賞賛していたは、ふとその人と目があって・・・・・・フッと失笑された
「へ・・・?」
「ねぇ、海賊の隊長さん。まさかとは思うけど・・・この子がその」
「あぁ、さっき話してた女だよい」
「うそ・・・冗談でしょう?」
「あのぉ・・・」
会話がいまいち理解できない
とりあえず自分が美人さんの歓迎されていないことだけは何となく感じ取れる
と思っていれば、美人さんはをちらりと見てまた感じ悪く笑った
「だって、まるっきり子どもじゃないこの子」
「20は過ぎてるよい。なぁ、」
「え?あ、はぁ」
「年齢じゃなくってよ。雰囲気が。乳臭い子ね。隊長さん、こんな子が好みなの?」
「ちち・・・。・・・」
あんまりの言われようだったが、はとりあえず黙って聞いていた
この美人さん、顔はめっぽう綺麗だが口は悪い
「こんな子やめて私と遊びに行きましょうよ、隊長さん。大人の遊びしに、さぁ」
「ふぉーぅ。もってもてだねぇ、マルコ」
「うるさいよい、サッチ。お前ぇは黙ってろって」
「、って言ったかしら?あなた」
「あ、はい」
「聞くと、あなた別に隊長さんの恋人でも何でもないんでしょう?」
「・・・」
「ならいいわよね。海賊の人たち、出発は明日の夕方だって言ってたし。一晩隊長さんお借りしても」
「・・・・・・」
「ねぇ、さん?」
「・・・どうして私に訊くんですか?」
恋人じゃないと言うのなら、なぜ自分に訊くのか
これは明らかな挑発、挑戦だとわかっていたけれど
わざわざ相手にして自分の感情を掻き乱す必要はない
なのに
「だって隊長さんが言うんですもの。『俺を自由にしたければ、の許可が必要だよい』って」
「え・・・」
「ねぇ、隊長さん?」
「・・・本当ですか、隊長」
二人の女性に視線を向けられ、けれどマルコは椅子にどっかりと座ったまま余裕の顔でジョッキを煽っている
「あぁ、言ったよい」
「なんで・・・」
そんな面倒なことを
は眉を寄せる
「・・・狡いことなさるんですね」
「なんのことだかな」
「・・・遊びに行かれるならご自由になさったらいいじゃありませんか」
「へぇ。行っていいのかよい」
「・・・私には止める権利など・・・、・・・」
「など?」
「・・・、・・・」
『ない』
そうはっきりと言えず、迷い葛藤するを眺めてマルコはにやりと笑っている
「・・・っ」
ていの良い余興にされているだけではないか
は奥歯を噛み、マルコから視線をそらした
「・・・先に船に戻ってます」
「あら。逃げちゃうの?」
「・・・」
「海賊なのに、弱いのねぇ」
「・・・、っ」
これ以上この場にいるのは嫌だった
「・・・・・・なんとでも。失礼します」
はさっさときびすを返し、パブを後にするべく扉の方へ早足で向かった
「」
「・・・、」
一度だけマルコに真剣な声で呼ばれたが振り向いてはやらなかった
「
・・・きらい・・・、です・・・っ
」
聞こえないぐらい小さな声で呟き、は逃げるように店を出た
寂しさと愛しさの乗算
※続きます
意地悪マルコ隊長、女心をもてあそぶ
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