ドリーム小説
体がだるい。
頭も少し重い。
だが、病は気からとも言うし。
仕事をしていればそのうち治るだろうと高を括っていたのが、悪かったのかもしれない。
はいつものように朝食の片付けをしようと、正座を解いて立ち上がった。
その瞬間。
視界が反転した。
自分の意思に反して体が後ろに傾く。
薄れいく意識の中、驚き目を見開くカンベエの姿が視界に入ってきた。
カンベエのその顔を見たのを最後に、の意識は途絶えた。
休 む !
はすぐに寝床に寝かせられ、医者が呼ばれた。
「過労・・・」
医者の診察を聞いて、カンベエは顔を歪める。
肉体的にも精神的にも、の体は衰弱しきっていた。
休養が必要とのこと。
カンベエの脳裏に、昼夜を問わず走り回るの姿が思い浮かぶ。
確かに、いつ休んでいるのかと不思議になるほどは働き通しだった。
「すぐ無理するんだから、あの子は」
「つらくてもそれを口に出さない。ちゃんの良い所でもあり、悪い所でもありやすね」
ユキノは心配そうに溜め息をつき、シチロージは苦笑する。
「だんな。すみませんが、しばらくあの子についていていただけます?」
「わしでよいのか?」
カンベエの言葉にユキノは微苦笑する。
「だんな以外の誰があの子の側にいてやるんですか。それとも、他のお侍様に頼みましょうか?」
「ん・・・それは、ちと」
カンベエは顎に手をやり、語尾を濁す。
ユキノは「ほら、やっぱり」と笑う。
後をカンベエに任せ、ユキノとシチロージは仕事に戻っていった。
昼間でも薄暗い部屋の中。
が褥に寝かされている。
カンベエはの横に腰を下ろし、静かな寝顔を見つめた。
は起きる気配を見せず、静かに呼吸している。
雪のように白い肌は、今はどこか青白い。
目の下には薄っすらと隈が浮かんでいる。
ただでさえ痩せているのに、白い寝間着の襟から見える首はがりがりに痩せ細っていた。
「お主がこんなになるまで気付かぬとは。わしは不甲斐ない男よ、誠にな」
カンベエは自分の情けなさに自嘲的に笑む。
白い手袋を外し、カンベエはの頬をそっと包み込んだ。
光のない暗闇が、の前に広がっていた。
よく見れば、闇の中に二人の人間がいる。
どこか懐かしく、記憶に薄い。
幼き頃の自分を夢見ていた。
幼な子は、ぎゅぅと自分の両の手を握る女を見ていた。
『かか様。何故泣いておられるのですか?』
『・・・』
母は静かに涙を流しながら、の頬に手を添える。
『。しっかり・・・ご奉公するのですよ』
『かか様?』
母は手を放し、から離れていく。
『かか様。どちらへ行かれるのですか?』
闇の中に消えていく母の後ろ姿。
幼心に、もう母は戻らないと悟る。
はその背に向かって、小さな手を伸ばす。
『かか様、を置いていかないで下さい!』
母の姿はもうない。
それでもは必死に手を伸ばす。
『置いていかないで・・・を』
母が消えていった方を。
闇しかないそこへ、は叫び続けた。
『一人に・・・一人にしないで!』
カンベエは、目を閉じたままのをずっと見つめていた。
このまま永遠に目を覚まさぬのではと不安になるほど、静かな眠り。
「」
深く愛しい声でその名を呼ぶ。
まるでそれに答えるように。
の睫が微かに揺れた。
カンベエは身を起こし、の顔を真上から見下ろす。
閉じられたの目尻に、涙の雫が浮かびあがり。
静かにすぅと顔の横へ流れ落ちていった。
「、お主という奴は・・・夢の中ですら、泣いておるのか」
どんな夢を見て。
どんな想いで涙を流しているのか。
カンベエにはわからない。
それでもせめてもの慰めにと、カンベエはの目元を指で拭ってやった。
「カンベエ・・様?」
不意にの目が薄っすらと開いた。
の視界一杯に入ってきた愛しい男の名を呼ぶ。
「。目が覚めたのか」
「はい・・・私は」
「過労で倒れたのを覚えておるか?」
「過労・・・。いえ」
過労と言われると、確かに体がつらい。
「女将を呼んでくる。しばし待っておれ」
そう言ってカンベエは立ち上がろうと膝を立てた。
途端、の中に言い知れぬ恐怖が走る。
――― 一人にしないで!
の腕が俄かに伸ばされる。
去ろうとするカンベエの装束の裾を細い指が掴もうとする。
だがその手はカンベエを掴むことなく。
は慌てて手を引いた。
「?」
「な、何でもありません。ユキノさんは・・・恐らく厨房にいらっしゃると思います」
何でもないと。
は笑顔でカンベエに伝えた。
我侭は言えない。
言いたくなどない。
はカンベエに背を向けた。
背後で静かに障子の閉まる音がした。
カンベエは行ってしまった。
自分で望んで送り出したのに。
は胸が軋みを上げるのを感じた。
目頭が熱くなってくる。
の目から、ぽたりぽたりと涙が零れた。
布団や着物に染みを作っていく。
―――泣くでない、。
いつもなら、苦笑いしながらカンベエが涙を拭ってくれる。
でも今はあの優しい手はいない。
は痩せて細くなってしまった自分の指で、目尻を拭った。
心も。
体も。
満たされない。
どうして。
どうして側にいて欲しいと、言えないのだろう。
たったその一言が。
「ふっ・・・ぅ」
止まらない嗚咽を抑えようとは手で口を塞ぐ。
吐き出されなかった嗚咽は、大粒の涙となっての目から零れていく。
この涙を止める術を、は知らない。
カンベエに抱かれなければ止めることのできない弱い自分が、は嫌で仕方がなかった。
「カンベエ様・・・」
の細い肢体が、切なくカンベエを求める。
涙が止まらない。
は自分の細い腕で自身を抱きしめ、愛しい人の名を呼んだ。
「カンベエ・・さま・・・」
「そんな、熱い声で呼ぶでない」
それはあまりにも突然。
衣の擦れ合う音が耳について。
立ち去ったはずのカンベエに、背中から抱きしめられた。
は体の全ての熱が背中に集まるような錯覚を覚えた。
カンベエのたくましい腕がを抱きしめる。
柔らかな長い髪が首に触れるだけで、の体は震えた。
「カンベエ様・・・出て、行かれたのでは?」
「お主の様子が普通ではなかったからな。すまぬが去る振りをさせてもらった」
「趣味が・・お悪いです」
カンベエが口を開く度に吐息が首にかかった。
の体が震える。
「」
「・・は・い」
「体が震えておるぞ」
「気のせいで・・・ございます」
「感じておるのか?」
わざわざカンベエはの耳元で囁く。
は緩く首を横に振った。
カンベエはの着物の襟を指で僅かに引っ張った。
露わになった白いうなじに唇を寄せる。
「・ん・・・っ」
耐えられず漏れてしまった声に、は口を手で塞ぐ。
僅かに疲労の残った体は、触れられることに対して逆に感度を増していた。
強情なに、カンベエは細い肩にきつく吸い付く。
白い肌に赤い花が咲いた。
「我慢はせぬ方が身のためだぞ」
「我慢など・・・しておりません」
「・・・そうか」
頑ななにカンベエは唇を上げる。
「じっとしていろ」
カンベエの顎がの肩に乗る。
何をされるのかもわからず、は僅かにカンベエの方を向く。
するりと。
カンベエの素肌の手が着物の合わせ目から滑り込んできた。
の体がひくりと跳ねる。
左の乳房が、カンベエの大きな手で包まれる。
は震える手を挙げ、カンベエの手をどけようと試みた。
「カンベエ様・・・・お手を」
「じっとしていろと言ったはずだ。動くでない」
胸を包むカンベエの五指に力がこもる。
言葉とは裏腹に、の体に熱が溜まっていく。
カンベエはその手に、の鼓動を感じていた。
常より速い脈が流れていく。
「カンベエ様・・・手をお放し下さい」
「変わらぬな。お主の体は、口以上に真を申す」
カンベエはの体を引き寄せ、自分の胸に全てを預けさせた。
カンベエは真上からを見下ろす。
「体がつらいのならば、無理はせん方がよいかな?」
カンベエの目が気遣わしげに細められる。
情交に及ぶ際、必ずカンベエがするその目がは好いていた。
熱のこもった目で、はカンベエを見上げる。
こんなところで止めて欲しくない。
最後まで。
堕ちるところまで。
連れていって欲しい。
羞恥が邪魔をして口で言えないは、いつもの如く、そっとカンベエの唇を指で撫でた。
カンベエは伸ばされた細い指を軽く咥える。
「わしは中途でやめぬぞ。嫌ならば、引っ叩いてでもわしを止めよ」
カンベエの口端が僅かに上がる。
はそれに笑みを浮かべて答える。
胸に触れていたカンベエの手が離れ、その手がの帯紐を解いた。
つ ぶ や き
やばいですね。もう次は表に置けません。
おっさま、犯罪です。
ていうか休んでねー。
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