ドリーム小説
それはとある日の蛍屋の玄関先でのこと。
背の高い父親らしき男性と、父と手を繋いだ小さな男の子の姿があった。
ユキノとの前で、父親はわが子の小さな頭をくしゃくしゃと撫で回す。
「申し訳ない、ユキノさん。こいつのこと、よろしく頼みます」
「いぃんですよ気にしなくて。ソウジロウ君も自分のおうちだと思って自由にして頂戴ね」
「・・・・・っ」
「ほら、ソウジ。よろしくお願いします、だろう?」
「・・よ・・・よろしくおねがい、しますっ」
ひどく緊張した様子で、少年はどぎまぎしながら自己紹介する。
は床に両膝をついて目線を低くし、ソウジロウに向かってにっこりと笑いかけた。
「よろしくお願いいたしますね。困ったことがあったら、何でも言ってくださいね」
「う・・うんっ」
に笑顔を向けられ、ソウジロウは返事をしながら俯き加減になる。
小さな少年の両の耳が薄っすらと赤いことに、ユキノと後ろに控えたカンベエだけが気づいていた。
「あらあら」という顔で笑うユキノに対し、カンベエは何とも言えない微妙な顔で顎をさするのだった。
これはもしかしたら、小さな恋敵の出現だろうか。
愛 す !
数日の間だけユキノの友人の子を預かることになり、その世話役にが選ばれた。
蛍屋にはたまに子連れの客も訪れる。
そんなとき小さな子たちは、きまってに懐くのだ。
自身も子どもは好きだったので、彼女も今回喜んでその役を買って出た。
玄関先から座敷に場を移し、畳に正座するの周りを少年は飛び回っていた。
預かった小さな男の子の名前は。
「おれ、徳川ソウジロウ!」
「ソウジロウ君ですか。私はと申します。ソウジロウ君はおいくつですか?」
「えーとえーと・・・・・よっつ!」
「そうですか。ソウジロウ君はとても元気ですね」
「うん!ねえちゃん。ソウジでいいよ!」
「ソウジ君、ですね。はい、承知いたしました」
先程からソウジロウはの周りを兎のように飛び跳ねては彼女の首にしがみついてくる。
元気がいいというか、よすぎるくらいだ。
よほどのことが気に入ったらしい。
父親はソウジロウのことを「人見知りする甘えっ子だ」と言っていたが、活発に動き回るその姿からは想像できない。
元気すぎて、体力に自身のないには数日間もソウジロウについていけるかどうかが心配だ。
「追いかけっこは、絶対勝てそうにないなぁ・・・」
「そうだな。お主では無理であろうな」
「はい。・・・・えっ?」
突然声をかけられ振り向けば、座敷の障子に手をかけたカンベエが部屋の様子を見て笑っていた。
「体力ではお主の負けであろう」
肩を揺らして笑うカンベエに、は苦笑して肩をすくめてみせる。
ふとソウジロウを見れば、少年は突然の訪問者に走り回るのをやめ、戸口に立つカンベエをじっと見上げていた。
「・・・・・・」
「わしの顔に何かついておるかな。少年」
「・・・お侍様か?」
いかにも興味津々という様子で、カンベエを見上げるソウジロウ。
カンベエは薄く笑いながらの前に腰を下ろし、抜いた刀を傍らに置いた。
ソウジロウの目が、カンベエと黒い刀を行き来する。
「あぁ。いかにも、わしは侍だ」
「・・・・・・」
「ソウジ君・・・どうかしました?」
「すごい・・・・!」
カンベエが侍だとわかるや、途端にソウジロウの顔に輝きが増した。
どうかしたのかと問えばソウジロウは嬉々として、まるでキクチヨのように大演説をするのだった。
彼の父親がソウジロウに語るのだという。
侍は強く、気高く、自他に負けぬ強靭な心を持っているのだと。
武家の出ではない父だが、ソウジロウに「侍のような強い男になれ」と説いているのだと。
ソウジロウの輝く目があまりに眩しくて、カンベエは苦笑する。
「お侍様!」
「よさぬか、仰々しすぎる。わしは島田カンベエと申す」
「じゃ、島田さま!おれは徳川ソウジロウ!」
「徳川か。立派な姓と名を持っておるな」
カンベエに褒められ、ソウジロウは嬉しそうな顔で横のを見上げる。
どうやらソウジロウの中ではすっかりカンベエが憧れの存在になってしまったようだ。
カツシロウといい、若い者に好かれる体質なのか。
「島田さま、聞いてくれ!」
ソウジロウはの横で正座し、真っ直ぐにカンベエを見上げた。
「今、母上は町の医者さまのところにいるんだ。もうすぐ、おれに弟か妹ができるんだ!」
「ほぉ。それはめでたいな」
「まぁ、本当に。では、ソウジ君はお兄さんになるんですね?」
「うん!だからおれがつよくなって、弟も妹もまもってやるんだ!」
ソウジロウは実に素直な子どもだった。
父に言われた、「侍のような強い男になれ」という言葉を忠実に守ろうとしていた。
生まれてくる弟や妹を守れ。
母を守れ。
弱き者を守れ。
女を守れ。
強く強く、成長していけ。
そして、いずれ現れるであろう伴侶を守れ。
守るべきものが何かを知り、そのために強くなろうと決意する小さな少年を。
カンベエは穏やかな目で見守り、「そうか」と静かに相槌を打つ。
「おれがみんなのことまもってやるんだ!」
「ほぉ。勇ましいな」
「本当ですね」
「ねえちゃんのこともまもってやるからな!」
「まぁ、なんと頼もしいことを。よろしくお願いしますね、ソウジ君」
「うん、任せとけ!!」
勢いよく立ち上がり、ソウジロウは再びの周りを駆け回る。
「危ないですよっ」と止めようとするにお構いなしに、ソウジロウは部屋中に気合いを振りまく。
元気すぎる子どもに、はカンベエと目配せして柔らかく苦笑した。
困り顔のにカンベエは肩を揺らす。
とカンベエ。
言葉を交わさず、視線だけで気持ちを伝え合う。
そんな二人の大人の静かなやり取りに、部屋を走り回っていたソウジロウの足が不意にぴたりと止まった。
とカンベエは、「おや?」とソウジロウの方に目を向ける。
「・・・・・・」
「ソウジ君?」
「どうした。ソウジロウ」
ソウジロウの目はじぃっとを見ていたかと思えば、ふっとカンベエに向く。
二人の顔を交互に見つめるソウジロウに、とカンベエが不思議そうにしていれば。
それはそれは突然に、小さな彼の口から。
とてもとても無邪気な問いが投げかけられた。
「島田さまとねえちゃんは、夫婦(めおと)なのか?」
・・・・・・。
・・・・・・。
沈黙。
のち。
「な・・・・・ななな何をっ?!」
「これはまた・・・何とも答えがたい質問を」
の顔は一拍おいて一瞬でぼわりと赤く染めあげられ、ソウジロウは何故が赤くなるのかわからず首をひねる。
まさかそんな問いかけをされるとは夢にも思っていなかったから。
赤い顔で小さな口をぱくぱくと動かし何も言えないに対し、カンベエは。
「鋭い質問だ。良く人を見ておるな」
「夫婦じゃないのか?」
半ば感心して顎をさすりながら、至極冷静にソウジロウと談を交わしていた。
「ふむ。そうだと言えばそうだが、違うといえば違うな」
「『そう』なのに『違う』?・・・よくわかんないな」
「そうだな。ならば・・・・・褥をともにした仲、とでも言っておこうか」
「しとね?」
「カ、カンベエ様―――・・・っ!!」
この問答にはさすがに慌てての縛も解けた。
子ども相手に何を言うのか、と真っ赤な顔で困ったような怒ったような泣きたいような表情をする。
一方でカンベエの言った言葉の意味がわからないソウジロウは、可愛らしく腕組みをして眉を寄せていた。
「ねえちゃん。『しとね』ってなんだ?」
「ソ、ソウジ君は知らなくてよいことです!!」
知らなくていいと言われれば余計知りたくなるものだ。
ソウジロウはやや納得いかない不満げな顔をする。
豆知識
褥=寝るときに下に敷くものです。
つまりはそういうこと(斉木的解釈)。
「じゃ、二人は夫婦なのか?」
「まぁ、似たようなものだな」
「・・・・・っ」
似たようなものと言われて、は今度は違う意味で顔を真っ赤にして俯いてしまった。
カンベエの比喩がこれ以上ないほど恥ずかしい。
ここにユキノやシチロージがいなくてよかった。
もし聞かれていたら、楽しそうな顔で何を言われるかわかったものじゃない。
誰にも聞かれなくてよかったと胸を撫で下ろし、とんでもない発言をするカンベエに憤怒する。
だが、その心の片隅には。
(ちょ、ちょっとだけ・・・・・嬉しかったかもっ)
手で覆い隠した口元が薄く笑んでいるのを自覚しないわけにはいかなかった。
それを素直に伝えることは恥ずかしくてできないけれど。
そんなこともあり、ソウジロウはに懐き、カンベエに懐き。
ソウジロウは毎日の後ろについて回り、ときには手伝いをし。
お昼を過ぎた頃に座敷に見に行けば、カンベエの胡座の中に収まってうたた寝していて。
二人顔を見合わせて肩を揺らしたりした。
ある晩、が酔っぱらった客に絡まれていたときなど、ソウジロウは我が身を省みずの前に立って彼女を守ろうとした。
結局カンベエがすぐにやってきて、男を威嚇して立ち去らせたため、もソウジロウも無事だったのだが。
『ねぇちゃんに手ぇ出すな!!』
勇ましく吠えて、自分を守ろうとしてくれたソウジロウを、は後でぎゅっと抱きしめたのだった。
そんな小さな騒動、大きな騒動があって、短い数日間はあっという間に過ぎようとしていた。
朝の蛍屋の玄関先に、数日前と同じようにソウジロウの父親が立っていた。
ソウジロウの母は無事出産を終え、今は医者のところで療養しているという。
生まれたのは、可愛らしい女の子。
ソウジロウはお兄さんになったのだ。
「ユキノさん、さん。本当にご迷惑おかけしました」
「いぃえぇ。何にも迷惑なんてかけちゃいませんよ。こっちこそ、ソウジロウ君のおかげで蛍屋がぱぁっと明るくなったってもんですよ」
父親は「ほら、挨拶しなさい」とソウジロウの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
ソウジロウはといえば、この数日間の活発さが嘘のように首をうなだれて立っていた。
何だか様子がおかしいなぁと思い、は両膝を床についてソウジロウと目線を合わせた。
「ソウジ君」
「・・・・・・」
ソウジロウが来たときと同じように優しい声で呼べば、小さな少年は上目がちにを見つめた。
小さな額に、眉の間に、皺が寄ってとても悲しそうにしているのを見て、はちくんと痛む胸で苦笑を浮かべた。
「ソウジ君」
「・・・・」
「お別れですね」
「・・・・」
「またいつでも遊びに来てくださいね」
ゆっくりと手を伸ばし、ソウジロウの頭を優しく撫でてやる。
ソウジロウからの返事はない。
本当にどうしたのだろう、とユキノも父親も、後ろに控えたカンベエもソウジロウを見下ろす。
周りの皆が彼を見下ろす中。
「・・・ソウジ君・・・」
一番近くにいたは、ようやく彼の様子を窺い知ることができた。
小さな両手が、着物の裾を握りしめて震えている。
が彼の顔を覗き込めば、口を真一文字に結んだまま、ソウジロウはぼたぼたと涙と鼻水を流していた。
との別れが惜しい。
たった数日とはいえ、本当に姉のように慕ってくっついてまわっていたのだから仕方がなかろう。
何とか泣くまいと必死になって袖で涙をぬぐうソウジロウを見て、は慈愛に満ちた目で彼を見つめた。
「ソウジ君、大丈夫です。私はいつもここにいますから」
「・・・・・・っ」
「だから、またいつでも蛍屋にいらしてくださいね」
「う・・うん・・・っ!」
「待ってますから。ソウジ君のこと」
「うん・・・・・おれっ!」
小さな少年は、ぐいっと乱暴に涙をぬぐうと、きりっと力のこもった目で真っ直ぐにを見つめた。
それは少年自身が望む、強い侍の目だとにはよくわかった。
「おれ、また来るよ!」
「えぇ。お待ちしてますね」
「おれ、もっともっと強くなって来るよ!」
「頼もしいですね。ソウジ君ならきっと強いお兄さんに」
「おれ、次はねえちゃんのことお嫁に貰いにくるから!!」
意を決したように大声で告げる、ソウジロウの声が朝の玄関先に鳴り響く。
拳をきつく握って仁王立ちするソウジロウに、その場の全員の目が釘付けになる。
しーんと静まった中で、小さな少年の頬がみるみる赤くなっていく。
思いがけない少年の告白に、は目をまん丸に見開いて驚いていた。
まさかこんな小さな子から想いを告げられる日が来ようとは。
目の前では、ソウジロウがからの返事を待ち望んでそわそわしている。
驚きに丸くなっていたの目が、次第に解凍し、柔らかな笑みに変わっていった。
の笑顔は、ソウジロウの言葉を心の底から喜ぶものだった。
小さな子どもの告白だからと冗談に取ったりせず、真剣に想いを受ける。
の顔に、ゆっくりと訪れる春のような笑みが浮かぶのを見て、ソウジロウの顔にも安堵と嬉しさから満面の笑みが浮かんでいく。
彼女の後ろに立つユキノとカンベエはまた、それぞれに違った反応を返していた。
「だんな」
「ん?・・・・なんだ、女将。その楽しげな顔は」
「ふふ。可愛らしい恋敵の登場ですわねぇ」
「・・・・・うむ」
まったくだ、と。
カンベエは頭をかきながら苦笑いする。
「これは手強い相手になりそうだ」
「ソウジ君・・・」
「おれ、もっともっと・・・島田さまより強くなってみせるから・・・・だから!」
赤い顔で必死になってに想いを告げるソウジロウに。
は笑顔で己の右手を差し出した。
「はい・・・楽しみにしてますね」
が差し出した右手を、ソウジロウは緊張しながらも強く握りしめる。
堅い握手を交わす、ソウジロウの両目からは止まっていた涙がぼたぼたとこぼれ落ちだした。
思いがけない我が子の行動に、父親は呆気にとられながらも楽しそうに笑っている。
はソウジロウの頭を撫でてやり、それからちらりと背後を振り返った。
カンベエが何ともいえない複雑な顔で頭をかいていた。
思わずは肩を揺らして笑ってしまい、カンベエは肩をすくめてそっぽを向いてしまうのだった。
小さな勇者が蛍屋を立ち去った。
すっかり静かになってしまった部屋の縁側に足を崩して座り、はどこか穏やかな顔で中庭を臨んでいた。
数日間のソウジロウのお守りの代わりに、今日一日は暇をもらったのだった。
ぽかぽか陽気の縁側でまどろむに、カンベエは声をかけて横に胡座をかく。
「静かになってしまったな」
「はい。まるで台風が通り過ぎた後みたいです」
「」
「はい?」
「寂しいか」
「そうですね・・・・ちょっと」
は自分の両手を見つめた。
本当に、ついさっきまでこの手の中にあった小さなぬくもりが消えて。
何だか寂しい。
膝に頭を寄せて昼寝をしていたあの子の高い体温が。
洗濯物をたたむの背にしがみついてきたあの子の重さが。
何だか恋しい。
自分の両手を見つめるの横顔が。
今までにカンベエが見たことがないくらい優しいもので。
可愛らしい娘の横顔ではなくて。
それは、愛する我が子に向ける母の顔のようで。
カンベエもまた、思うところがあった。
「」
「あ、はい」
何でしょう、と慌てて振り向けば、カンベエもまた神妙な顔つきで笑んでいた。
「カンベエ様・・?」
「子が・・・欲しいか?」
「え・・?」
思いがけないカンベエからの問いかけ。
はカンベエを見つめたまま、しばし動きを止めた。
幼な子と触れあうことで、の母性が開花したのかもしれない。
もともと母親の気質は十分に備えていたから。
ソウジロウをきっかけに、が我が子を持ちたいと思っても不思議ではない。
突然予想外の問いかけをしてきたカンベエに。
だがはいつもみたいに慌てたり顔を真っ赤にさせたりすることはなかった。
春の陽のように落ち着いた顔つきで、はカンベエを真っ直ぐに見つめて。
ふわりと目を細めて笑った。
「いえ・・・今はまだ」
カンベエが見慣れた笑顔で微笑む。
いつものに、カンベエの心がどこかほっと安堵する。
「よいのか・・・」
「はい。子どもはとても好きですし、いつかは、と願ってはいます。でも」
そう言ってカンベエの方に顔を向けた彼女の顔を。
カンベエは、きっと生涯忘れることはないであろう。
それくらい美しく、綺麗で、儚くて。
カンベエは、己がこの女と出会い、この女を愛したことを最高の喜びだと思った。
「もう少しだけカンベエ様と・・・・・二人だけでいたいのです」
優しい風が彼女の髪を揺らす。
彼女の頬にかかる長い髪を指ですくい、耳にかけてやった。
くすぐったさからか、気恥ずかしさからか、小さく俯く彼女の耳元に口寄せて告げる。
わしも同感だ。
は小さくカンベエを見上げて、くすりと笑った。
「ややが生まれたら、お主はそちらにばかりかかりきりになりそうだからな」
「え?」
「我が子とはいえ、お主を独り占めされるのはちと悔しい。ソウジロウでそれがよくわかった」
「な・・・・カンベエ様は・・もう」
呆れたように苦笑するの頬を、ひたひたと軽く撫でたたく。
「いつからそのような我侭に?」
「わしはいつも我侭で傲慢だが?」
の頭を引き寄せ、柔らかな髪に頬を寄せる。
軽く頬をすり寄せ、彼女の香りを存分に吸い込んだ。
は、優しい春の香りがする。
「」
「はい」
「ややが欲しくなったらいつでも申せ」
「はい?」
思わず上を見上げれば、間近に迫ったカンベエの顔。
悪巧みを考え付いた子どものように、楽しげににやりと笑っている。
「嫌というほど協力してやろう」
「へ・・・?・・・・・ぁ・・カ、カンベエ様っ!!」
意地悪なカンベエに、の頬が真っ赤にそまる。
これがいつもの。
可愛らしい小さな娘は、カンベエの腕の中にすっぽり収まってしまう。
に文句を言わせまいと、カンベエは笑いながら彼女をきつく抱きしめてしまう。
カンベエの胸に頬を押しつける形となり、は満足に言い返すこともできない。
「もう・・・!」と不満げな声をあげながらも。
愛しい者の腕の中で、彼女が静かに目を閉じていたことを知っているのは。
彼女自身と。
彼女を愛するこの男と。
中庭の木にとまってさえずる、二羽の小鳥だけ。
おまけ
「」
「はい?」
振り向きざま、腕を引き寄せられて唇を重ねられた。
突然のことに目をぱちくりさせて慌てれば、カンベエは口付けの合間合間に告げる。
「何日間、耐えたと思う」
「は、はい・・っ?」
「お主をソウジロウに奪われた、わしの気持ちも汲んで欲しいものだな」
「な・・何をおっしゃいます、カンベエ様ともあろうお方がっ」
あんな小さな子に嫉妬を?
そう問えば、また唇をふさがれて身体を抱きしめられ、大きな手のひらで腰や尻や背中をまさぐられた。
「言ったであろう」
「え・・っ?」
「わしは、独占欲の強い男なのだよ」
「ちょっ・・・カンベエ様・・まだお昼ですっ!!」
「すまんが夜まで待ってられぬ」
覚悟してくれと呟き、畳の上に押し倒されて手首を縫い付けられ、唇をふさがれた。
忘れかけていた熱が上がっていく。
我侭な彼に、必死に焦るの悲鳴を聞いて、庭の小鳥が呑気に鳴いていたのだった。
つ ぶ や き
真っ昼間から何やってだ、おっさま。
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