ドリーム小説
お前の背中が綺麗だと 彼が言う
ニケに捧ぐ
ラブホ特有の薄暗い灯りが部屋を夕方から夜の色へと変えていく。
とうに服を脱がされてしまった私は、下着姿でベッドサイドに腰掛けて彼を待っていた。
背を向けたベッドサイドの反対側では、彼が服を脱いでいる音がする。
重いジーンズがどさりと床の上に落とされる音がしたかと思ったら、ギシリとベッドが軋んだ。
彼に背を向けたままぶらぶらと足を揺らしていたら、彼に背中から抱きしめられた。
肩の上から両腕を前に回して羽交い絞めにして、私の頬に軽くキスをする。
「ヒョーゴ。眼鏡」
「あ?・・あぁ、当たったか。悪い」
私を抱きしめたままヒョーゴは片手で眼鏡を外して、ベッドサイドにことりと置いた。
それからまた私をきつく抱きしめて、頬に、首に、うなじにと唇を滑らせていく。
私の背中に彼の胸がぴたりとくっついていて、彼の体温を直に感じることができる。
私を抱いているときのヒョーゴの体温はとても高い。
ヒョーゴの手が私の体のラインを撫で下ろしていく。
ヒョーゴの唇が私の肩から肩甲骨へと滑り降りていく。
彼のいつもの感じさせ方。
私は彼のこの愛撫が好きだ。
「ヒョーゴは、後ろから抱きしめるの好きだよね」
「あ?」
「どして?」
素朴な疑問をぶつけてみる。
ヒョーゴは私を抱きしめたまま、数秒考えて、「嫌か?」と逆に聞いてきた。
「別に。嫌じゃないよ。ただ、後ろからの方が多いなぁと思っただけ」
「そうか?」
「うん。無意識?」
「あぁ・・・・・どうだろうな」
曖昧な解答を残して、彼の指が背中のホックをパチンと外した。
緩くなった肩のストライプは指に引っかけられて左右にずらされていく。
用のなくなったインナーはベッドサイドにぱさりと落とされ、代わりに彼の両手が私の両胸を優しく包み込んだ。
「・・・・・」
「うん?」
「また少し、でかくなったんじゃないか・・?」
「エッチ。そうやって揉むからじゃない?」
皮肉を言いながらも、本心では嬉しいとか思っている私は変わっているのかもしれない。
彼の指が私の体を成長させていくのだとしたら、それはそれで嫌じゃない。
ヒョーゴの細い指が優しい手つきで胸を揉んだり、胸の先端をつまんだりする。
そのたびに小さくあがってしまう、甘い声。
彼は私以上に、私が感じるところをよく知っている。
「よく声が出るな」
「ん・・・・だめ?」
「いや。悪くない。相変わらず濡れるのは早いしな」
「・・・今日はそんなことないよ」
「嘘付け」
彼の右手が胸を離れて下にまわる。
咄嗟に足を閉じようとしたら、右足の腿の内側に手を添えられた。
「足を閉じるな」
耳元で命令されて、右足を外側に押し広げられてしまった。
命令口調の彼に、逆らうことが出来ない。
違う。
逆らう気がないのかもしれない。
下着の横から指を差し入れて、彼は私の濡れ具合を確かめる。
さっきは意地を張ってあんなことを言ったけど、あぁきっとまた馬鹿にされるのだろうなぁ。
だってもう十分なほど濡れている、そんなこと自分でよくわかっている。
耳元で、ヒョーゴが喉を鳴らして笑った。
「お前・・・濡れすぎだろ」
「・・・言わなくていいよ」
「最高だな」
「それはどうも」
こんなことで褒められて恥ずかしい、なのに嬉しいなんて思ってしまう私はどこかおかしいのかもしれない。
「」
「うん?」
「悪い」
「なに?・・・んっ」
吸い付くように唇を塞がれて、彼の舌が私の口内をせめたてる。
彼の左手は私の胸をまさぐり、右手は私の体から蜜をかき出していく。
私の唇を塞ぐ、ヒョーゴのキスは、いつだって優しい。
絶対に歯が当たらないように気を遣ってくれて、柔らかい彼の舌が私の全てを溶かしてくれる。
背中にぴったりくっついているヒョーゴのカラダから熱をもらい、私自身体温を上げていく。
カラダが熱い。
内側と外側から、じりじりと焦げていく。
私の体から、とめどなく蜜が流れ落ちていく。
部屋にいやらしい水音が立ち始めて、恥ずかしさに彼の足を軽く叩いて抗議した。
ヒョーゴは私の体の中から指を引き抜き、最後にちゅっと軽いキスを唇にして、にっと不敵に笑った。
「上出来だろう」
ベタベタの指先を、彼は私に見せつけるようにすり合わせたり離したりして弄ぶ。
絶対わざとだ、彼は意地悪だ。
「エッチ・・」
「男はみんなそうだろう」
腰上げろ、と言われて、ベッドに手をついて少しだけ体重を浮かせた。
彼の指が器用に下着を脱がせていく。
これで互いに何も身につけていない状態になったわけだ。
ヒョーゴに手を引かれてベッドの真ん中に移動して、今日初めて真正面から向き合った。
彼の両目が私を隅々まで観察する。
「また痩せたか?」
「・・・・・そ?」
ヒョーゴは鋭い。
私の細かな変化をよく見ている。
「ちゃんと食ってるのか」
「大丈夫だよ。あれ?心配してくれてるの?」
彼をからかって話をはぐらかせてしまおうと、にっと意地悪な笑顔でヒョーゴを見上げた。
馬鹿が、と悪態をつかれると思ったのに、予想外に彼は私の顔をじっと見て、それから。
「悪いか」
伏せがちの目で見つめられ、私は彼から目をそらせなくなってしまった。
肩を押され、柔らかいベッドに身を沈めて、上から覆いかぶせられて唇を塞がれた。
ひとしきりキスをして、私が一番弱い耳を責められながら、彼の荒い息に私はまた熱を上げていく。
「・・・いいか」
「うん・・?ぁ・・・後ろ?」
彼の言いたいことがわかって、緩慢な動きでうつ伏せになった。
ヒョーゴの手が私の背中から腰、尻へと撫で下ろしていく。
その愛撫に導かれるように、私は緩慢な動作で腰を高く持ち上げた。
ヒョーゴは後ろから私を犯すのを好む。
私の背中が綺麗だと彼は言う。
柔らかいベッドシーツに頬を押し付けて、彼から与えられる快楽に身を委ねた。
彼に突き入れられるたびに胸が圧迫されて、女の艶かしい嬌声があがってしまう。
私のその声は甘いというよりも、ひどく切なく悲しく聞こえるらしい。
ヒョーゴとセックスをし始めた最初の頃は、「泣いてるのか?」と最中に何度もとめられて聞かれた。
ヒョーゴは優しい。
ヒョーゴのセックスはひどく優しい。
体を繋げたまま、ヒョーゴは体を折り曲げて私の背中に密着してきた。
汗ばんだ彼の胸の体温と速い鼓動を感じる。
私の肩口に彼は顔をうずめて、ゆっくりと腰を動かす。
獣のような荒い息が耳にかかって、私の背中をぞくりと快感が駆け抜けた。
「・・・・・・・」
「ぅん?・・ん・・・・あっ!」
獣の形で繋がって体をぴたりと密着させた状態で、彼の指が私の茂みをかきわけ、オルガスムスを導こうと動き始めた。
体の中で一番敏感で弱い部分を刺激されて、どうしようもない快楽に足ががくがくと震え始める。
指の腹で花芯をこすられ、あられもない声を出して快感を訴えた。
「ぁ・・・あっ・・・・や、ヒョー・・ゴっ」
「相変わらずいい声だな」
見なくてもヒョーゴの口元が笑っているのがわかる。
私の指が真っ白なシーツをきつく握り締める。
悔しさからじゃない、ヒョーゴが与える快感に耐えるため。
私の背中に体を密着させたまま、ヒョーゴはゆるゆると腰を動かしていく。
高い彼の体温と彼が圧し掛かってくる重みを背中に感じて、私のカラダが、頭が、快楽に犯されていく。
恥ずかしげもなく、気持ちいいと伝えたら、ヒョーゴは喜ぶかな
不意に私の下から彼の指が離れていった。
もてあそばれていた部分が、彼の指を恋しく思ってじわじわと熱を上げていく。
ヒョーゴの荒い息がすぐ耳元で聞こえていたのに。
彼は私の肩口から顔を離し、それからゆっくりと上半身を起こして私の背中から体を離していった。
泣き叫ぶ
私のカラダが
私の背中が
あまりに突然に外気にさらされた背中が、彼を追い求めて泣き叫ぶ
『さみしい』と 『恋しい』と
言い知れぬほどの不安が、私のカラダを突き抜けていった。
「・・や・・ぁ・・・・・・・・離れ、ないで・・・・・っ」
私の知らない私が、切ない声で彼を呼ぶ。
と同時に、私はひどく混乱した。
私は・・・今・・・何を口走った?
シーツに顔を押し付けたままのくぐもった声は、だがヒョーゴに届いたようだった。
彼の体がピクリと反応を返す。
「あ?」
「あ・・・・・・」
何を口走った?
頭が急速に回転して、理解する。
彼が離れていって、私は。
寂しさから懇願してしまった
恥ずかしい。
みっともない。
本能のままに叫んでしまった、返事を返した彼に聞こえていないわけがない。
顔に一気に血が上り、恥ずかしくてシーツに顔を押しつけた。
私らしくない
またヒョーゴに馬鹿にされる
さっきから彼の腰の律動が止まったままだ。
鼻で笑われてからかわれる。
覚悟して彼の揶揄の台詞を待ちかまえていた。
それなのに。
返ってきたのは馬鹿にしたような彼の声じゃなくて。
「これでいいか?」
離れていった彼の身体が、また私の背中にぴったりと密着してきて。
汗ばんだ彼の身体を背中に感じる。
細身で骨の浮き出た彼の胸。
男の人にしては随分と軽い体重。
言葉に出来ないほどの安堵感が、一瞬で私の心を満たしていった。
「なんだ。寂しかったのか?」
「・・・・・・・・・ばか」
耳元で囁かれる優しい揶揄。
(・・・・・やだ)
嬉しくて、涙が零れそうになった。
「ヒョ・・・ゴ・・・・・・」
あのね
「どうした?」
あのね
・・・・・・・・・・・ありがと
「うぅん・・・・・・・・なんでも、ない。続き、して?」
それを合図に、彼が再び腰を動かし始める。
突き上げられるたびに私は甘い声で鳴く。
汗ばんだ彼の胸の体温を背中に感じて、胸がどうしようもないくらい締め付けられた。
「・・・ヒョ・・ゴ・・・っ」
腰の動きが一層速くなる。
あぁもうすぐ限界なんだ。
私はシーツを握りしめる指に力を込めた。
欲望の限界を追う彼に、私は一人で耐えなければならない。
指先が真っ白になるくらいきつく握り締めた。
なのに。
「・・・・・・」
シーツに爪を立てる私の手を覆うように彼の手が重ねられて、指を絡めて強く握りしめられた。
一人で耐えるために指先に込めていた力が、たったそれだけでするりと抜けていってしまった。
彼に強く手を握りしめられて、私は安心して目を瞑った。
閉じた瞼の奥が、じわじわと熱くなっていく。
ねぇ
どうしてそんなに優しくするの?
そんなに優しくされたら
もうあなたから離れられなくなっちゃうよ
私の身体から彼が抜けていき、ぴたりと張り付いていた彼の胸が離れていった。
きつく繋がっていた手も、ゆっくりとほどかれていく。
セックスの後、ベタベタと馴れ合わないのが私とヒョーゴの関係。
そうだ、これが私たちの関係。
熱くなるのは繋がっている間だけ。
「・・・」
セックスの後、恋人たちがするようなの愛の言葉を囁く代わりに。
彼は綺麗だと言ってくれた私の背中を真っ直ぐに撫で下ろしていく。
浮き出た背中の肩甲骨を、愛しそうに彼の手が撫でる。
あまりにそこに執着するものだから、私はときどき、自分の背中に羽根が生えていて。
彼はそれを愛でているのではないかと錯覚してしまう。
「相変わらず、背中綺麗だな」
「そ?・・・・・・・・・・ありがと」
気だるげに上半身を起こし、足を崩して座っていたら、ヒョーゴに後ろから抱きしめられた。
ヒョーゴの唇が、私の肩に、それから肩甲骨の間に口付けていく。
「ね・・・・・・・なんでそんなに背中がいいの?」
確かな答えが聞きたかったわけではないけれど、何となく聞いてみた。
ヒョーゴの答えは
「綺麗なものが好きで何が悪い」
と、かなり自分勝手なものだったけれど、わりと簡単に私の鼓動を速くさせた。
ヒョーゴが唇を押し当てた部分が、じくじくと熱を持っていく。
背中が熱くて、そこから羽根が生えてきそう。
そうしたら、私はその羽根でどこへ行こうか。
背中をヒョーゴに抱きしめられて、目を閉じて、瞼の向こうに見えたのは。
訪れたこともない海と島のイメージだった。
行ったことはないけれど、それは世界史の教科書で見たことのある名前の島と半壊の彫像だった。
”サモトラケに、行きたいな・・・・”
小さな小さな、声にならない声で囁いたら、ヒョーゴの唇が一瞬だけ止まった。
不審そうに「何か言ったか?」と聞かれ、私は首を後ろに向けて、楽しそうに笑ってみせた。
「なんでもない。・・・・・ね、ヒョーゴ。お風呂入ろっか」
ふわふわの泡で、ヒョーゴに背中を洗ってもらおう。
いつか生えてくる羽根のために、この背中はいつも綺麗にしておこう。
羽根が生えてきたら、その羽根で遠くエーゲ海まで飛んでいこう
顔も、腕もない、背中に大翼を広げた彼女が待っているから
彼女の前に降り立って、聞いてみたいことがあるの
「ね、ヒョーゴ。背中洗って」
「あ?」
「お風呂出たら、もっかいしよ?」
「ばっ・・・・俺がもつかっ」
「でもこないだは2回したじゃない?」
「・・・・・・・あれはお前が上だったからだろうが」
「じゃ、上になってあげる。ね。しよ?」
「・・・・・・・・」
「だめ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・明日起きられなくてもしらんぞ」
「大丈夫。ありがと、ヒョーゴ。背中洗ってあげるよ」
ねぇ、ニケ
あなたの綺麗な背中は、誰が愛してくれたの?
あなたの背中の綺麗な羽は、誰のキスで生まれたものなの?
戻
SEO
掲示板
[PR]
爆速!無料ブログ
無料ホームページ開設
無料ライブ放送