ドリーム小説
平和な日常というものは、ある日突然壊れたりする。
この家の住人、・は正直にそう思った。
一体誰が予想しただろうか。
まさか自分の両親が、別の夫婦と入れ替え取り替えで再婚するなど。
彼と彼女のエトセトラ★ 前編
ある日突然両親に紹介された家族、スネイプさん一家。
素敵な夫婦には一人息子がいた。
自分と同じ年の、セブルス・スネイプ。
「さんと同じホグワーツ大学の薬学部なのよ。よろしくしてやってね」
「・・・はぁ。よろしく」
が差し出した手を、セブルスは無言で握って返した。
黒髪に黒い目で、痩身痩躯。
いつも徹夜で勉強しているせいか顔色は悪く、黒い影が背中に見えていて、お世辞にも女子にキャーキャー言われる
類の人種ではない。
某有名少女漫画の、「トーストに塗るオレンジジャムみたいな少年」みたいな夢のような展開になどなるはずはない。
セブルス・スネイプとは、きっと朝と夜に挨拶をする程度の間柄になるだろう。
と、は勝手に思っていた。
ところがどっこい、現実はの予想を大きく裏切る。
*
この突然の事情を、は親友であるリリーに話した。
「あぁ、知ってるわ。薬学部のスネイプでしょ。彼もてるのよ。ファンクラブまであるんだから」
「・・・・・(どびっくり)」
「スネイプとひとつ屋根の下かぁ。奇異な運命に選ばれたわね、」
「リリー、楽しんでる?」
「あら、わかる?」
楽しそうに鼻歌など歌いながらリリーは教室へと入っていった。
しかし世の中信じられないことがあるものである。
まさかあのきわどい系(失礼)セブルスのファンクラブがあるとは。
*
「なんでよ?」
家に帰るなり、リビングで読書をしていたセブルス本人にずばりと聞いたところ、ぶっきらぼうに一言返された。
「知らん。勝手にできていた」
興味ありませんとばかりにゆったりとソファーに座り本を読むセブルスに、はじとーっという目を向ける。
「あんた、何かスポーツとかしてるの?」
古今東西、何かしらスポーツをしている男性というのはもてるのが常である。
確率3%くらいの気持ちで聞いてみると、なんとも意外な答えが返ってきた。
「あぁ」
「うそ・・・。ちなみに何?」
の「うそ・・・」発言にセブルスは一度だけじろりとを睨んだが、すぐに視線を本へと戻した。
「弓道」
さらっと言われた単語の意味がわからず、はきょとんとする。
「アーチェリー?」
「違う。日本の武道だ」
「違いがわかんない」
の言葉にセブルスは呆れたように溜め息をつき、パタンと本を閉じると自室へ戻っていってしまった。
「ちょっと!弓道って何よー!?」
の叫びだけが家の中に木霊していた。
*
翌日そのことをリリーに告げた。
「、知らないの?うちの大学の弓道部って言ったらインカレで優勝するくらい強いのよ」
「知らない」
きっぱりはっきり言い切ったに、リリーは「呆れた」と肩を落とす。
そしてリリーは「ちょっと見にいきましょう」と言った。
「えー・・・」
「いいじゃない。どうせ午後は休講なんだし。全国一の弓道部の練習なんてそうそう見られるものじゃないわ」
なかば無理矢理言いくるめられ、結局リリーに引っ張られては格技場へと足を向けた。
そして着いたそこは、既に女の子の黄色い声が飛び交っていた。
ずかずかとかき分けて前に行くと、遠くで部員たちが練習しているのが見えた。
「。ほら、あれがスネイプでしょ?」
そう言ってリリーが指差す方向には、長身の男子学生が立っていた。
セブルスだ。
「・・・・・・・」
の目が彼に釘付けになった。
衝撃で言葉が出ない。
セブルスは、の知らない凜とした姿でそこに立っていた。
肩にかかる黒髪を後ろでくくり、白い胴着に黒袴、白足袋をはいて遠くにある丸い的を鋭い目で見つめていた。
はっきり言おう。
「・・・かっこいい」
「?」
「え?あ、ちがうっ!そうじゃなくてっ」
赤い頬のを見てリリーはにやりと笑う。
ダンッという高い音がしてそっちを向けば、的の中心あたりに正確に矢が当たっていた。
もちろんセブルスが放ったもので、女の子たちの黄色い声が一層高まる。
次の瞬間、は遠くにいるセブルスと目が合った。
セブルスの細い目が僅かに見開かれている。
を見て驚いているようだ。
「手くらい振ったら?」
「な、なんで?」
「なんでって、あなたたち知り合いでしょ?」
「知り合いだけど、親しくないわ」
あくまで冷静に答えるに、リリーは「ふーん」とつまらなそう。
「家族のくせに?」
「リリー、こんなとこで言っちゃダメ!」
しーとは指を口に当てた。
競技場に目を戻せばセブルスは次の矢を構えていた。
セブルスの意外な一面にの鼓動が僅かにはねる。
認めたくない感情がの心に渦巻いていた。
*
弓道部の練習を見に行った帰りに、リリーに飲み会に誘われた。
「ねぇ、。ジェームズに頼まれたんだけど、今度飲みに行かない?」
「飲み会?んー・・・ごめんパス。今月お金ないし。でもなんでジェームズが?」
不思議そうに問うに、リリーは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「それはねぇ。シリウスを来させるためだわ」
「法学部の?」
法学部のシリウス・ブラックと言ったら、頭脳明晰、容姿端麗、かつお金持ちで有名。
説明口調ですみません。
「そう。シリウス、のこと気にいってるから。を餌にシリウスを釣って、他の女の子をおびき出そう
っていうジェームズの作戦」
「私は餌ですか」
「あははは」
結局返事は保留ということにしてその日はリリーと別れた。
そういえば・・・ふとは考えた。
セブルスは彼女がいるように見えない。
その前に遊んでいる形跡がない。
飲み会とか行かないのかな、と考えるだった。
*
「セブルス、合コンとか行かないの?」
知りたいことは、何も考えず直接本人に直球勝負。
それがのモットーだった。
帰宅してすぐにはセブルスに質問してみた。
返ってきたのは実に素っ気無く、セブルスらしい答だった。
「くだらん」
そしてまた読みかけの本に目を戻してしまう。
「そんなことをする時間があるなら研究の方に回す」
セブルスらしいとは思った。
彼にはカラオケボックスで女子に囲まれて王様ゲームとかしちゃってる姿より、白衣を着て試験管とか
振っている姿の方が何倍も似合っている。
「まぁ確かにセブルスのイメージじゃないしね」
「なんだ、突然」
「でも研究室にばかり篭ってたらキノコ生えてきちゃうよ?そしたら彼女もできないよ?気分転換に飲み会
くらい行けばいいのに」
「生えん。余計な世話だ」
溜め息ひとつ、細く長い指でぱらりと次のページを捲る仕草には思わずどきんとしてしまった。
聞こえていないとはわかっていても、それを隠すように意地悪なことを言ってしまう。
「可愛くないの」
「結構だ。お前ほどではない」
「生意気!お前とか呼ばれる筋合いないし。私の方が年上だし!」
「あぁ、そうだな。僅かに3日年上なのがそんなに嬉しいか?」
「あーいえばこーいう!生意気!」
頭の良い人間相手に何を言っても勝てない。
は仕方なく口を閉じた。
すごすごと部屋へ戻ろうとするに、意外にもセブルスの方から声をかけてきた。
「お前は。飲みに行くのか?」
振り返るとセブルスの視線は相変わらず本から動いてはいなかった。
「あ、うーん。誘われてはいるんだけど」
「行かないのか?」
「考え中。今月お金ないし。それに誘われた日って両親ズが第二次新婚旅行に行っちゃう日なんだよね」
「何か問題でもあるのか?」
「問題大有り。セブルス、あんた夕ご飯どうするの?」
この家では家事担当はもっぱら女性の仕事。
2人の母とが受け持っていた。
料理のできないセブルスのご飯を旅行中作ってやってくれとは頼まれていた。
「別に。適当に食べる」
「何それ。頼まれた私の立場ないじゃん」
「赤ん坊でもあるまいし、食事ぐらい何とかできる。飲み会でも行ってくればいい」
むか。
セブルスの悪気もないが思慮もない言葉にはむかむかした。
ちょっとくらい自分を頼ってくれてもいいのにと思えて仕方なかった。
「・・・・・いい。行かない」
子供のようにぷりぷりと拗ねるとは勢い良く階段を登っていった。
が何故不機嫌になったのかセブルスはわからず、首をかしげて溜め息を吐いた。
*
数日後、またリリーに飲み会のことで声をかけられた。
「ー。飲み会」
「行かないよー」
先手を打って制するに、リリーはパンッと手を合わせる。
「お願い。が来ないとシリウス、すっごくがっかりするのよ」
「だって私ブラック君のことよく知らないし」
たまにキャンパス内でリリーがジェームズに声をかけるとき、たまにそこにシリウスがいて数度挨拶をしたくらいだ。
「が知らないだけでシリウスはのことよく知ってるのよ」
「なんじゃそりゃぁ」
興味ないという感じで返事をしたが、自分を見てくれている人がいると知って、はちょっとだけ嬉しかったりした。
「お願い。ちょっとだけでいいから」
「うーん・・・」
「一杯だけ飲んで帰っていいから」
「んー、まぁそれくらいなら。いいよ」
苦笑して承諾するに、リリーは満面の笑みでお礼を言う。
行かないと言っていただったが、リリーの押しと、数日前のセブルスの言葉への対抗心を抱き、結局飲み会に
行くことになった。
*
そして飲み会の日、居酒屋にて。
盛り上がり始めた席に現れたの姿に、シリウスの顔が輝いた。
「!」
「どうも。こんばんわ」
世辞的笑顔でシリウスに挨拶する。
テーブルにつくと、シリウスは自分のグラスとメニューを持っての横に移動してきた。
「わりぃ、なんかほとんど初対面なのにいきなり名前とか呼んじまって。俺シリウス・ブラック、法学部な。よろしく」
「どうも。・です。まぁ、初対面でもないじゃない?リリーを交えて何度か会ってるしね」
の言葉にシリウスの見えない尻尾がパタパタと揺れた。
カッコいいというよりバカ正直で可愛いなぁとは思った。
「は何飲む?」
「んー。カシスオレンジ」
「ビール飲もうぜ」
「だめ。今日は酔っ払えないの。すぐ帰ってご飯作んなきゃ」
「いーじゃん。ここでメシ喰ってっちゃえよ」
「だーめ。・・・お、弟待ってるから」
「弟いるんだ?名前は?」
「セ・・・・・セヴィー」
3日年下の同居人を弟に仕立て上げてしまったことには心の中で合掌した。
「ふーん。なんか“セブルス”の愛称みてぇ」
ドッキーン。
ばれやしないかとバクバクと打つ胸を沈めるため、はやって来たカシスオレンジをぐっと呷った。
そのときだった、シリウスの友人らしき男が口を開いたのは。
それはそれは実にいやらしい、の嫌いな種類の表情と声で。
「セブルスっていやぁさ、ほら薬学部の」
話の話題の人物は、まさにが触れて欲しくないその人だった。
何か言われるのかとビクビクするの耳に、実に耳障りな声が届いた。
「すかしてんのなー。首席合格だからってさ」
「しかも弓道部のエース。生意気にもファンクラブまであるらしいぜ」
本人がいないところで言われるそれは陰口以外の何物でもない。
はそういうのが大嫌いだった。
「・・・・・」
「お前らやっかむのやめろよ。みっともねぇだろ。なぁ、ジェームズ」
「酒が不味くなるねぇ。陰口は2人っきりでやってほしいものだね」
「んなこと言ってお前だってあいつのこと嫌いだろ?シリウス」
フォローに回るシリウスとジェームズの言葉も、沸々と湧き上がるの怒りを抑えられないでいた。
「いっつも研究室で何やってんだろぉな?」
「カビの研究とか?」
そう言って大笑いする男たち。
ついにの我慢の糸がぷっつりと切れた。
ダンッ!!
コップを勢いよく置くに、シリウスとリリーの視線が行く。
「?」
「どうかしたか?」
「ごめんね。・・・私、帰るわ」
それだけ言うと飲み代だけテーブルに置き、は足早に店を後にした。
リリーとシリウスの呼ぶ声が聞こえたが、申し訳ないがそれらを無視して店の扉を閉めた。
*
はカツカツとヒールの音に怒りを混ぜて帰り道を歩いていた。
セブルスのことを馬鹿にされて頭がかっかする自分がいる。
自分のことでもないのに恥ずかしくて顔が熱くなる。
胸が痛い。
もういい。
認めてしまおう。
私は。
「セブルスが好き」
言ってしまえば気持ちいいし、すっきりした。
でも胸の鼓動が鳴り止まない。
不安でドキドキする。
だってきっと彼には自分は口煩い同居人としか思われていないから。
だから悔しくて悔しくてしかたがない。
キュッと噛んだ唇に付いたカシスオレンジが口の中に広がって甘かった。
*
「ただいま!」
ドアが壊れるのではないかというくらい大きな音を立てて開閉したかと思ったら、いきなり大声で帰宅宣言され、
セブルスは持っていた林檎を落としかけた。
「おかえり・・・。飲み会だったのではないのか」
「だったわよ!」
「早かったのだな」
「早いわよ!」
よくわからない返事をしてはセブルスの真ん前のソファーにどっかりと座った。
あからさまに“怒ってます”ムードを全身から噴き出すに何と言っていいかわからず、
ちらちらとを見ていたセブルスはしばらくすると本と林檎に興味を戻した。
「何よ。何も聞かないの?」
「あぁ。聞かれたくなさそうだからな」
「・・・それもそうね。うん。ありがと。ところでセブルス、夕飯は?」
「今食べている」
「はぁ?!まさか林檎だけ!?」
驚き半分怒り半分のの言葉に、セブルスは返事代わりにしゃりっと林檎を齧った。
「栄養失調になっちゃうわよ。何よ、食事くらい自分でできるって言ってたじゃない」
「できる。現に今食べている」
「林檎の丸齧りなんてちょっと好奇心旺盛な赤ちゃんだってできるわよ。もう、だから私夕飯作るって言ったのに」
ブツブツ不平を漏らすをよそ目に、セブルスは相変わらずシャリシャリと林檎を齧っている。
「構わん。俺のことでお前が時間を無駄にする必要はない」
「な・・によそれ」
至極冷静に言うセブルスの台詞にの心がちくりと痛んだ。
まるで俺の領域に入ってくるなと言われているみたいだった。
「いいじゃない、それくらい。・・・一応、家族なんだから」
おざなりに言ってはみたが、その事実を受け入れたくない自分がいた。
セブルスと家族になりたいわけじゃない。
そしてまるでの心を読んだかのようにセブルスの返事が返ってきた。
「お前を家族だと思ったことなどない」
嬉しいはずの言葉だが、の気持ちを知らないセブルスに言われると完全に拒絶されているようにしか聞こえない。
寂しくて悲しくて、は眉を歪ませて食って掛かった。
「何それ。私ってこの家ではペット以下なわけ?」
「カテゴリーが違う。そうではなく」
「じゃぁどうだっていうのよ!」
最早癇癪を起こした子供だった。
頭のいい人間に蔑まれているようで、情けなくてみっともなくて、は首をうなだれて自分の膝を睨みつけていた。
意外すぎる言葉がの頭に降り注いだ。
「俺はお前を女としてしか見たことがない」
「・・・・・・は?」
がばりと起こされたの顔は、口も目も驚きで真ん丸に開かれた実に情けなくアホらしい顔だった。
しかも目の前に座るセブルスが自分を見ていて目があってしまったから尚更バツが悪い。
「お前がそうさせたんだ」
「なにそれ・・・?」
意味のわからないセブルスの言葉に、は馬鹿正直に聞き返した。
呆れたというセブルスの目とぶつかった。
「お前は自分の行動に自覚がないのか?家族になったからといって、今まで完全に他人だった、しかも同じ年の
男の前であんなことを」
「私、何かしたっけ?」
「した」
あからさまに重い溜め息をつかれ、は少しばかり緊張する。
どんなすごいことをしてしまったのだろう。
は不安と恐怖と好奇心の入り混じった視線をセブルスに向ける。
教えて欲しいと言うをじとぉっと見つめ返すセブルスの頬が、こころなしか赤くなっていった。
「では言わせて貰うがな。風呂上りにTシャツ一枚でウロウロするな。短いスカートでソファーの上で体育座り
するな。それから・・・下着で寝るな、何か着て寝ろ」
「な、なんで知ってるのよ!?」
「毎朝起こしてこいと言われる俺の身にもなれ」
実は、自分でも自覚するほど寝相が悪い。
毎朝ノックしての部屋に入ると、掛け布団から半分以上体を出してすやすやと寝ているが目に付くのだ。
それも習慣のせいか、下着姿で寝ているが。
あの姿を見られていたという事実にの両耳が一瞬で真っ赤に染まる。
目をそらして僅かに頬を染めるセブルスを、は「ちょっと可愛いなぁ」などと思いながら見つめていた。
「なによ赤くなっちゃって・・・。あ。もしかして私のこと好きとか?」
張り詰めた空気を和ませようと冗談半分に言ってみる。
だが返ってきた返事は。
「そこまで堂々と自惚れられると皮肉も出ないな」
そう言ってセブルスは薄い唇の片端を上げて笑う。
こんな笑い方が似合うのはセブルスしかいないと思った。
そう言ってじっとを見つめてくるセブルス。
真剣なその黒い瞳に、冗談半分で言った言葉が冗談ではないと知れた。
まさかとは思う。
だが途端嬉しさと恥ずかしさが込み上げてきて、の耳の赤さが首まで広がった。
だがふとの頭におかしな思いが過ぎる。
「あんた・・・まさか下着姿見て私のこと好きになったわけじゃないでしょうね?」
「どんな変態だ、それは。そんなわけないだろう」
呆れた、とセブルスは何度目かの重い溜め息を吐く。
チラチラとの方を見ながら、セブルスはぽつぽつと語る。
「全体的に惹かれた。感情的で、よくもまぁあそこまでコロコロ表情が変わるものだと」
確かには表情豊かだ。
楽しいときは満面の笑顔で、嫌なときは心底嫌そうに顔を歪める。
「お前を見ているだけでこちらまで楽しくなれるんだ。そんな風に思ったのは、お前が初めてだ」
そう言って皮肉っぽく笑うセブルスの顔は、これ以上ないくらいカッコよかった。
「それって敬愛?それとも好意?」
「ま・・・好意だろうな」
照れてそっぽを向くセブルスのその言葉を聞いて、は唇をキュッと噛み締めた。
両耳の熱が上がっていく。
「わ、私も・・なの」
「は?」
「だから!・・・私もセブルスが好きってこと!」
の言葉に、今度はセブルスの目が見開かれる。
信じられないと目が言っている。
だがその頬は、嬉しいと言わんばかりにみるみるうちに紅く染まっていく。
「・・・嘘付け」
「う、嘘じゃないわよ!わかんないけど・・・・いつの間にか好きになってたの!理由なんかない。
とってつけたような嘘の理由なんて、絶対言わないわよ」
キュッと唇を噛み締めて、は自分の膝を見つめた。
そのまま黙ってしまったをセブルスは不審に思ったが、の耳が真っ赤なのを見てにんまりと笑った。
そして「了解」とでも言うかのようにポンポンッとの小さな頭を叩いて撫でた。
*
は座る場所をセブルスの前からセブルスの横へと変えた。
セブルスは遠慮がちにの肩に腕を回した。
「何だか、一気に恋人同士になっちゃったわね」
「そうだな」
セブルスの短い返答とともに沈黙が流れる。
つけっぱなしのテレビからは、面白くもないトーク番組が流れていた。
不意にが口を開いた。
「あのさぁ」
「あぁ」
「そのさぁ」
「なんだ」
「しない?」
「・・・・・」
ここで「何を?」というのは野暮すぎる。
チラリと視線だけ横に向ければ、相変わらず両耳を真っ赤にしてそっぽを向いているがいた。
「両親ズがいないなんて・・・この先そうそうないし」
「聞くが、お前はいつも付き合って初日にこういうことをするのか?」
セブルスの声には、特に侮蔑は含まれていなかったが。
だが、自分が尻軽女だと思われたと勘違いしたは慌てた。
「ち、違うわよ!信じてもらえないかもしれないけど私結構純な娘なんだから。こういう風に思った相手は
セブルスが初めてなんだか・・ら・・・」
今更弁解するのもなんだが、は必死になって捲くし立てた。
きょどきょどおどおどするの方へ、何やら楽しげな顔をしたセブルスがゆっくりと近づいてきた。
「セブ・・ルス?」
「本当に面白いな、お前は」
ソファーが鳴る音が妙にいやらしかった。
セブルスの顔が近づいてきて、緊張からキュッと目を瞑ったの唇に返事代わりの口付けが降ってきた。
「甘い。オレンジか」
「一杯だけよ。セブルス、甘いのダメじゃなかったっけ?」
「いや。これくらいならちょうどいい」
そう言って今度は深く口付けられた。
体中に流れた甘いお酒を全て吸い取られるかのように、強く強く。
完全に油断していたの胸の上にセブルスの手がそっと添えられ、細い身体がぴくりと跳ねた。
唇を重ねたままゆっくりと目を開けると、セブルスと目が合った。
惜しむように唇が離れていく。
「好きだ。」
セブルスと同居するようになって、名前を呼ばれたことなど数えるほどしかなかった。
耳元で名前を呼ばれ、体がぞくりとあわだった。
が答を返す前に、また唇を塞がれていた。
以前、キリリクでお披露目した作品です
かなり修正されています
裏に続きます
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